2018年4月16日月曜日

決算企業は意外と狙い目…そこに必ず産まれる価値を手にするには…?


昨日のオプション売り取引の話に関連して、もう1つ話題を見繕ってみましょう。


オプション売りでは、ボラの小さい銘柄ほど安全だけど利益も小さくなるローリスクローリターン、逆にボラの大きい銘柄はリスキーだけど利益も大きくなるハイリスクハイリターンになると、前回述べていました。

(まぁオプション売りに関わらず、あらゆる取引で当たり前のことなんですが)


しかし、実は、オプション売りには、圧倒的ボーナスチャンスといえるような絶好の投資機会が存在します。


それが、タイトルにも挙げた、企業の決算報告なわけです。


なぜチャンスなのか?


その理由は、オプションの価格を決める要因に隠されています。


オプションの価格というのは、満期までの残り時間と、対象株のボラの大きさで決定します。

残り時間が長ければ長いほど、そしてボラティリティ(価格変動)が大きければ大きいほど、対象の株価が動く可能性は高まりますから、いわば「将来の株価の予想券」と呼ぶことのできるオプションの価格は、それに応じて高くなるわけです。


ボラというのは原則過去の株価の変動の大きさから求められるものですが、それ以外にも要因は存在します。


例えば、世の中を揺るがすような大事件・大災害が起きたら、パニックで株価は急変動し、市場全体的に、ボラは突如として大きくなることでしょう。

また、影響は小さいでしょうが、その時の金利や為替の状況なんかも、ボラの大きさに考慮され得るものでしょう。


しかし、為替変動なんかは当然のこととして、突然の大事件などは、いつ起こるか誰にも予想することができません。

なので、あらかじめボラがどう動くかを予想するなんてことも、当然できないんですね。


・・・が、しかし、ここからが今回の本題、あらかじめいつ行われるかが決定しており、しかも確実に大きなボラの変化を引き起こすことが確定しているイベントが、どの企業にも3ヶ月に1度やってくるのです。

 
そう、それが、決算ですね。


当たり前ですが、決算が発表されると、その内容次第でその企業の株価が大きく変動します。

結果上に動くか、下に動くか、予想通りであまり動かないかはともかく、決算は確実に株価に影響を与え得る不確定要素として存在し、その企業の持つボラを大きく高めます。


もちろん、どの程度のボラが産まれるかは、完全に企業に依る形ですね。


決算で大きく動くことが予想される企業のボラは当然より高い形になるでしょうし、逆に大方の予想が固まっており、特にサプライズもないと予想される決算ならば、決算というイベントを控えていても、それほどボラは大きくならないかもしれません。

(しかし、どんなに小さくてもそこは決算、影響は0ではなく、確実に決算によってボラは発生します)


特に理由を聞かなくても、その辺は常識というか、直感的にも当たり前の納得いく話でしょう。


したがって、決算の発表直前は、その企業のボラが高くなっている、すなわち、オプションの価格が高くなっていることになるのです。


そして、決算が発表されれば、その内容がどのようなものであれ、大きな不確定要素が1つ解消されたわけですから、ボラは大きく消失します。


すなわち、決算が発表された時点で、自動的にオプションの価格は大きく下落します。


ここまで言えば、賢明な読者の方におかれましては、もう説明不要でしょう。


そう、決算前にオプションの売りポジションを仕込んでおけば、決算発表と同時に、そのポジションの価値が自動的に下がるのが確定しているのですから、その価格下落分が自分の利益としてゲットできることになるわけです!

(売りポジションに慣れていない方にはややこしいかもしれませんが、買いポジションの価格が下落したら当然その人は損をするのですから、その逆の売りポジションを持っていた人は、価格の下落分、得をすることになるのです)


コールは株価が上がると上がり、プットは株価が下がると上がるわけですが、株価がどう動こうとも、オプション全体の価格のベースラインがガクッと下がり、コールもプットも価格がとりあえずある程度下がることが確定しているわけです。


つまり、オプション売りポジションを持っていれば、決算発表後、株価がどう動こうが、とりあえず100%、ある程度の利益が産まれることは確定している、という夢のような状況なんですね。


「なら勝ち確じゃん、よっしゃ飯食ってる場合じゃねぇ、ちょっとオプション売るために1億借金してくる!」・・・と思われる短絡うっかりさんがいらっしゃるかもしれませんが(いないと思いますが)、もちろん、100%利益で終わることが確定しているわけではありません


つまりこういうことです。


例えば決算直前の株のプットオプションを1枚5ドルで10枚売却したとしましょう。

オプション1枚は100株分ですので、この売却で5×10×100=5000ドルの現金ゲットです。

(ただし、売りポジションなので、現時点では返済せねばならない負債。時間の経過とボラの消失で、この負債を0に持っていけたら完全勝利です)。


そして、決算発表を終えたことによるボラの消失で、このプットは1枚2ドルまで下がるとしましょう。

(もちろん正確には計算できませんが、大体その企業の普段の平均的ボラの大きさから、どのぐらいまで下がるかはあらかじめ計算できます)


つまり、決算を終えることでこの売りポジションは2000ドルの評価額になることが決まっているので、5000ドルあった負債が2000ドルの負債になってくれるということですから、あなたは決算が終わるだけで3000ドルの利益をゲットすることが確定の状況になっているわけです。


しかし、発表された決算はゴミカスレベルの最低内容、その結果株価が超大暴落してしまいました!

プットの価格は株価が下がると上がりますから、プットの価格は急騰、まさかのまさか、1枚9ドルにまで値上がりしてしまったのです!!


よって、プットの価格は決算発表のボラの消失で3ドル下がりはしたけれど、悪決算の株価アップでそこから7ドルも上がってしまった、結果トータルで売却前より4ドルも上がってしまい、5000ドルの負債が9000ドルの負債に膨れ上がってしまい、涙目敗走顔真っ赤・・・


悪決算ですとその後もずるずる株価は下がる可能性が大きいですから、敗走しようにも逃げ場がない、激ヤバな状況ですね。

(もちろん同じプットを買い戻せばいいのですが、粘れば時間が味方してくれてまた価値が下がっていくポジションをわざわざ買い戻すというのは、結構決断力が必要です)

恐らく、最終的には暴落した株をかなり割高で買わされることになる、というオチが待っていそうです・・・。
 


・・・うーん、言葉で説明してみましたが、正直、当たり前すぎることをこう長々と説明するのも、ちょっとアホらしいですね。

分かっている人には当たり前すぎて無意味、そして分からない人にはこんな長い文で説明されてもイミフという、最悪パターンかもしれません。


ま、要するに、「ボラの消失により得られる利益より、決算後の株価の動きから生じる損失が上回る可能性がある」という、それだけの話ですね。


ただし、繰り返しですが、ボラの消失によりある程度の利益を得られることは絶対に確定しているので、多少悪決算になってもトータルで利益を得られる可能性は十分に高い、チャレンジしてみる価値は大いにある、いい取引だと思います。


基本的にオプション売りポジションに新しく入るならプット売りですので、上のことから言えそうな教訓、というか個人的にやるならそう考えるかな、というポイントは、以下の点ですね。


  • 決算企業にプット売りで入るなら、なるべく大きな暴落はしないと予想できる企業を選ぶこと
     
  • ただし、大暴落が絶対ないと誰しもが予想する企業は、当然、ボラが小さいので、決算直前にあえて売りエントリーするうま味が小さい
     
  • よって、ある程度ボラが大きく、それなりのリスクはあれど、「いざ暴落してプットの権利が行使されて株を買うことになっても納得できる企業」を選ぶのが最善か・・・?

もちろん、暴落しない企業など誰にも予想はできません。

しかし、決算でのプット売りエントリーは結構いい戦略ですから、勇気を出して飛びつく価値はある・・・のは間違いないので、やるならば「現物株を買ってもいいと思える企業」に突撃するのがベストかと思う、というお話ですね。


前回も述べた通り、プット売りで失敗しても、待っている運命は「その企業の株を買う」ということだけですから、現物を買ってもいいと思える企業なら、果敢に決算前プット売りエントリーするのは非常に良いのではないかと思います。


「現物株を買ってもいい」と思える企業ならば逆説的にそこまで暴落もないでしょうし、繰り返しですが、大暴落さえなければ、決算後のボラの消失により、結構な利益が産まれることはあらかじめ確定している素晴らしい取引なのですから。

(大暴落さえしなければ、ちょっとぐらいの下落でも勝利、もちろん横ばいでも株価の上昇でも大勝利です)



めっちゃくちゃ文字だけの説明で長くなりましたが、具体例を見てみるとしましょう。


ちょうどいいタイミングで、決算シーズン到来です!


決算予定の企業は、「earnings calendar」とでも検索すればいくらでもヒットしますが、個人的にはNasdaqのカレンダーが、時価総額順に並べ替えることもできて見やすいように思います。


さっそく今週分を見てみました。

https://www.nasdaq.com/earnings/earnings-calendar.aspxより

現地時間16日月曜日の決算企業を、時価総額順に並べてみたのが上図ですが、ほうほう、個人的には、FANGの一角、Netflix (NFLX) がやっぱり一番気になりますね!


こちらNFLXのオプション板です。

金曜日引け時点のNFLXオプション板

あまりにも今回出すのにピッタリの良い例過ぎてたまげました。


ちなみに、前回言及するのを忘れていましたが、ボラの大きさというのはオプション板中のImplied Volatility、通称IVの大小で判別可能です。


IVというのは、各種パラメーターから、ブラック・ショールズの式などで導くことが可能なようですが、私は詳しくは把握していません。

詳しく把握した所で私がIVを決められるわけじゃないですし、どうでもいいでしょう。


さて、そのボラの大きさを示すIV、今週満期のNFLXオプションのIVは、軒並み100%超え!!


・・・まぁ、何パーセントなら高くて何パーセントなら低いのか、初めてだと全く分からないわけですが、昨日見た安定企業の筆頭・Tは18%とかそんなものでしたね。

現在全銘柄中トップレベルの高さのIVとして例に出したSAGEは、こちらも100%程度でした。


つまり、NFLXという優良株が、決算を控えているというだけで、米国市場全銘柄中一番ボラが高いものと同じぐらいの、ヤバいレベルのボラになっている状況に!!


なお、今週満期のオプションの下には、来月満期のを表示させてあります。

こちらは、もちろん月曜の決算も挟んでいるわけなのでこの決算の影響がないわけではないですが、それ以上に満期までの時間が十分長いので、決算の直接的な影響はあまりなく、普段のNFLXのIVぐらいに落ち着いています。

見ると、全て50%台ですね。


すなわち、この決算というイベントが直後に控えているというだけで、どれだけIVが上がっているかがお分かりいただけるかと思います。



私なら、そうですね、NFLXは好決算を出して爆上げするのではないか!・・・という気がするので、積極果敢に、インザマネーのプットなんかを売ってみてもいいんじゃないでしょうか?!


インザマネープットは、売り取引の場合、よりハイリスクハイリターンであり、行使価格割れになって株を買わされる可能性が高くなりますが、逆に株価が上がってくれたら、アウトの売りよりも遥かに大きい利益を手にすることが可能です。


ということでそうですね、どうせただの紙上のバーチャル予想なので、ここはかなり攻めて、行使価格320ドルプットを売るとしますか。

こちら、Bid 19.45 Ask 19.95で、まぁかなり買い方に歩み寄って、19.50ドルで売れたとしましょう。


つまり、このプットを1枚売るだけで、1950ドルの現金ゲットですね!


これで、NFLXが好決算を出して、金曜日の株価終値が320ドルを超えてくれれば、わずか1週間で1950ドル、つまり約20万円が、丸々懐行き、丸儲けです!

(もちろん、1枚売るのに3万2000ドル、約320万円以上の余力資金が必要になるのは、前回から何度も述べてきた通りです)


そして今回最重要な点は、決算を終えるだけでオプションの価格は下がるので、この売りポジションを取った時点で、ある程度の利益を出せるのが既に確定してる、ということですね。


IVが、まぁ「Current IV」として表示されている現在のIV、48.58%を参照するとして、決算後大体50%にまで下がったとすると、理論上、このプットは11.50ドル程度に下落します。

(もちろん、決算直後は株価の動きが多少は激しいでしょうから、ひょっとするとそれよりやや高いIVが維持されるかもしれませんが、決算前より大きく下がることは確実です)


よって、19.50ドルで売ったものが自動的に11.50ドルぐらいになることはもう確定したようなもの、つまりこのプットを1枚売っただけで、800ドルの潜在利益は既に確保したも同然なんですね。

(もちろん、株価が上がればそこからプット価格はさらに下がるし、株価が下がればプット価格は上がってしまいます)


あとは、NFLXが好決算を出して、金曜時点で株価320ドルを超えてくれれば最高、NFLX株を購入する煩雑さなどなしに、最初にゲットした1950ドルの現金丸儲けです。


もしそこを割っても、このプット売りで1株あたり19.50ドルも利益を得ていますから、株価が300.50ドルにまで下がらない限り、トータルでは利益を得られるという形ですね。


これ、かなり勝ちの確率は高いのではないでしょうか。

(もちろん、NFLXが悪決算を出して、株価300ドル割れしたら敗北、「プット売りなんてしない方が良かった」という形になりますが、 その時でも、NFLX株を実質300.50ドルで購入したのと同じ状況になるだけですので、これは正直、全然問題ないのではないかと思います。

 NFLXを300ドルで購入した人なんて、世の中に大量にいることでしょう)


とりあえず、実際エントリーすることはしませんが、月曜日の引け後が決算、明けて火曜日、どんな感じになるのか見ものです(オプション売りどうこうではなく、NFLXの決算自体が楽しみです)。


・・・何かまた無駄に記事が長くなっちゃいましたね。


まぁ折角なのであとついでに、今週の他の決算も見ていたら、私なら「現物株を買うことになってもいいかな」と思えるものとして、Johnson & Johnson (JNJ) なんかが目につきました。

火曜日決算発表予定の、最大の時価総額企業ですね。

https://www.nasdaq.com/earnings/earnings-calendar.aspxより

金曜日引け時点のJNJオプション板

そして、こちらはNFLXと違い、「決算が控えているのに、大してIVが上がっていない」例の筆頭でしょうか。


それでも、もちろん、来月満期のものよりは確実にIVが高くなっています。

(一見そうじゃなく見えますが、 来月満期のは非常に低い行使価格で、あまり意味のない割とデタラメな値のIVが表示されているので、同じ行使価格、例えば130ドルプットを比べていただければ、29.30%と19.45%とで明らかです)


まぁ、JNJも、T程ではないにしろ、株価超安定の優良株ですから、決算でもそれほどデタラメな動きは期待されていないということでしょうね。


安定してオプション売りを回したいのであれば、JNJなんかも非常に良いと思います。

(ただし、基本的にIVが低いので、まともな利益を出そうと思ったら、株価も高めですしかなりの資金が必要)



あ、最後に、カレンダーを見たら、なんと我らのGEが今週金曜日寄り付き前に決算発表ですか・・・。

金曜日引け時点のGEオプション板

GEも、やはり大きく動くことが期待されているのか、IVは結構アップしています。

これは見ものですね!

どうなるGE・・・どうか好決算を!!




・・・そんな感じで、以上、「決算前の企業にプット売りエントリー」は結構良さそうな戦略、という話でした。


・・え?私ですか? ならお前がやれよって?


私はやりませんよ。


なぜならば、何度か言っている通り、決算でボラが上がって結構な利益が確約されているといっても、所詮これは売り取引ですから。

やはり、オプション買い取引の圧倒的な値動きには敵わないのです。

(いや、値動き自体は、同じオプションなので買いも売りも同じですね。投入資金に対する変動効率が違う、という感じですね)


しかし、より安全に行きたい方には、この決算直前プット売り、結構おすすめですね。

もちろん決算を跨ぐので若干のリスクはありますが、得られるリターンはそれを凌駕するものがあると思います。


リスクをきちんと把握した上で、やってみる価値は十分にあると思える、決算直前プット売り戦略の紹介でした。

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