(前→その8:売り取引をより詳しく / 次→その10:オプション売り取引の続き)
米国株オプション取引の解説シリーズ、ここ最近見ていたオプション売りについて、具体例を使って見てみようと思います。
タイトルにて高配当株を比較対象に挙げましたが、保有ポジションから定期的に資金を得られるという点において、オプション売りと高配当株ホールドは近い所のあるものかな、と思います。
そして、「高配当戦略なんて目じゃない」と挑戦的なことを書きましたが、実際個人的には、目じゃないを通り越して、全く違いすぎる、お話にならない、比較するのもおこがましい、どこをどう見てもオプション売りの方があらゆる点で素晴らしいと思えてなりません。
どんな理論やお題目よりも実例を示すことほど説得力のある話はありませんから、具体例を見てみましょう。
こちら、AMZN (Amazon.com) のオプション板、2月16日(第3金曜)に撮っておいた画像になります。
2月16日引け時点のAMZNオプション板 |
AMZNには、週1オプション、すなわち毎週満期のオプションが存在します。
枠の大きさの都合でごく一部しか示せていませんが、この日満期を迎えた2月16日限のオプションと、翌週2月23日限のオプションを示してあります。
さてここで、豊富な資金が潤沢にあって、その資金を元に安定して定期的な収入を欲しいという欲張りさんはどうすべきか・・・
高配当株ではなく、オプション売り取引に、その最終解答はあったのです!
何をどうすればいいのか、その一例をお示ししましょう。
オプション売り取引で、毎週の収入!
オプションにはコールとプットが存在します。
詳しい説明は以前の解説記事を参照いただければと思いますが、オプション売り取引に、特に何もポジションを持たない状況、いわゆるノーポジから入る場合、原則として、プット売りから入るのがいいかと思います。
その理由は、こないだから何度か書いている通り、コール売りは潜在的な損失が無限大であり、ノーポジで入るのは危険だからということが第一にあると言えましょう。
他にも、オプション売り取引を毎週行う上で唯一気にするべきことは、「対象株が暴落しない」こと、すなわち、オプション取引の対象とする株を選ぶ上では、「株価が横ばいか上昇で勝ち」のプット売りに安心して入れるような銘柄を選ぶのが良い、というのも、逆説的にプット売りから入る理由の1つと言えそうですね。
そんなわけで、実例の1つ目には、現在凄まじい強さを誇る王者AMZNを選んでみました。
さて、上の画像を撮った日は、2月16日です。この日にプット売りに入るとしたら、私ならどうするでしょうか。
以前、オプション板の見方として、
「オプション買い取引では、アウトオブザマネーであればあるほど危険、インザマネーであればあるほど安全」
などと示しましたが、オプション売りでは当然その真逆、アウトが安全、インが危険(かどうかはともかく、権利行使に至る可能性が高い)となります。
プットの場合は上に行くほどアウトオブザマネーになっていきますから、一連のプットオプションが並ぶ枠内の上であればあるほど安全ということになりますね。
言うまでもなく、枠内の上に行けば行くほど、プットの値段も安くなっていきますから、売却しようとしている立場からすると、儲けが小さくなります。
すなわち、上にあるプットほど、ローリスクローリターンになるということですね。
さて、AMZNに限らず最近は若干市場が不安定な気もしたので、あまりリスクを冒して攻めるのも危険であるから、私ならそうですね、行使価格1440ドルのプットを売るでしょうか。
プットの価格を見ると、Bid 16.45のAsk18.00、評価額(BidとAskの平均値)は17.225ドル、直近取引価格 (Last) は17.09ドルとなっていますね。
まぁ、ここはキリ良く、17.00ドルにて、このプット1枚の売り注文を出したとしましょう。
この価格なら、恐らく取引成立するのではないかと思います。
よって、無事約定したとします。
・・はい、これで、来週AMZNの株価が1440ドルを割らなければ、あなたは1700ドル、すなわち約18万円丸儲け、1週間で18万円もの収入をゲットしたことになります!!
さっそく答え合わせをしましょうか。
こちら、先週金曜日、2月23日のAMZNオプション板です。
2月23日引け時点のAMZNオプション板 |
・・・はい、AMZNはこの日、株価1500ドルで取引を終えました。
余裕も余裕、16日に売った行使価格1440ドルのプットは、満期であるこの日を待たずとも、とっくのとうに紙くず化していたことでしょう。
結果論ですが、もし先週時点で割と強くAMZNの伸びを確信していたなら、もっと下の方にあったプット、例えば最初の画像の一番下にあった行使価格1462.5ドルプットを売っていれば、1枚売っただけで2800ドル、30万円の収入をゲットできていたことになります。
さらにいえば、行使価格1500ドルのプットであれば、(画像にはありませんが理論上)50ドル以上で確実に売却できたことになるので、1週間で5000ドル以上丸儲けになっていました。
割と凄まじいですね。
オプション売り取引最大の難点=エントリーに大きな元手が必要
ただし、オプション売り取引の唯一にして最大の弱点は、元手資金が結構な大きさ必要になるということが挙げられます。
米国株オプションは1枚あたり100株を取引対象にしますので(これは、1枚1000株分の日経平均オプションとは完全に違う点なのでご注意ください)、プットを1枚売るのに、対象の株を100株購入するだけの余力がないとエントリーできないシステムになっています。
最初の例に挙げた行使価格1440ドルのプット1枚売りであれば、1440 × 100=14万4000ドル、ただしプットの売り上げ分は必要資金から引いて考えることができるので、プットの売り上げ利益1700ドルをマイナスして、14万2300ドルの余力資金が口座内にないと、このAMZNプットを売ることができないんですね。
なお、これはSEC(アメリカ証券取引委員会)かCBOE(シカゴオプション取引所)かが決めているルールなので、証券会社によらず、これは絶対だと思います。
(もちろん現物口座ならば、です。信用口座であれば、信用枠で実際の余力資金以上の取引が行えるわけですが、それは信用枠の使用なので、オプション取引のルールではありません。証券会社ごとのルールですね。
オプション取引であれば現物口座でも凄まじい破壊力のリターンは出せるので、私は、破滅への第一歩である信用取引には絶対に手を出しませんし、これを読んでいる方も手を出さないことをオススメしたい限りです)
話が逸れましたが、14万2300ドルと大量の資金が必要ではあるのですが、リターンは1700ドルだったのです。
率で考えましょう、週率約1.2%のリターンです。
いいですか、年率じゃないですよ、1週間で元手の1.2%の現金をゲットですよ!
単純計算で、年率60%以上です。
どんなに超高配当でも、年利5%かそこらが現実的にあり得る範疇の高配当株と比べて、全くお話にならない、比べるのもおこがましいレベルのリターンになることがお分かりいただけたでしょうか。
恐らく多くの方が、「そんな上手い話があるわけがない」と思われることでしょう。
しかし、事実は事実です。
むしろ、勇気を出して行使価格1500ドルプットを売っていれば、1500 × 100=15万ドルからプット売却で得た資金5000ドルを引いて、14万5000ドルの元手で、1週間で5000ドルの収入を得たことになります。
週利3.4%!年利170%とかそのぐらい!!
ただまぁこれはAMZNがとても調子よく上がった週の素晴らしいタイミングの例なので、毎度こう上手くは行かないでしょう。
「じゃあ上手くいかなかった時はどうなの?どうせ破産するとかいうのがオチなんでしょ?」と思われるかもしれませんが、そんなことはありません。
最初の例で、仮に先週金曜日にAMZN株価が1440ドルを割っていたとしたら、行使価格1440ドルのプットを1枚売っていたあなたは、AMZN株を100株、1440ドルで買わされるだけです。
もちろん、AMZNが大暴落していきなり株価1000ドルとかになったりしたら、1440ドルで買った株が1000ドルになったということで大損ですが、AMZNがそこまで落ちることは恐らくないでしょう。
ただ、AMZNが暴落することはあまり考えにくいですが、適当な銘柄でプット売りをして、突如暴落を食らうことは大いにあり得るお話です。
その意味で、最初上の方で、「暴落の危険性が小さい、強い銘柄を選ぶこと」というのをオプション売り取引エントリーの銘柄選びの条件に挙げたのでした。
ちなみに、この「損失」の面においては、オプション売りも高配当株も条件は全く同じです。
例えば高配当のXYZ株を14ドルで買っていて、いつの間にか株価が10ドルまで下がってしまったとしたら、資産が約30%下落していますから、配当をそれまでいくらもらっていようと、トータルではマイナスになってしまう可能性が高いでしょう。
株価1400ドル超えのAMZN株が1000ドルになってしまった時、同じく約30%の下落を食らいますが、条件は同じということですね。
高配当戦略もオプション売りもどちらも対象株価が大きく下がればマイナスなのは全く一緒、それなのに、オプション売りの方は、毎週、配当など相手にならないぐらいの利率での収入ゲットが可能です。
私個人的な意見では、高配当株のホールド・配当再投資が、オプション売りに比べて勝っているポイントは、一切、何一つありません。
3ヶ月に1回・・?超高配当銘柄であっても、3ヶ月も待って1-2%かそこら・・・?
正気ですか?オプション売りなら、ほぼ勝ち確の安全取引でも、1週間でそのぐらいの現金ゲットですよ?
あえてオプション売りの難点を挙げるとすれば、最初から言っている通り、オプション売りには結構な額の元手が必要(=大体対象の株を100株買える資金)、そして、国内の証券会社での扱いがないことの2点でしょうか。
ちなみに、そうは言っても、私はオプション売り取引は多分しばらくやらない予定です。
永久にやらないかもしれません。
それは、以前も書きましたが、「オプション買い取引に比べて、資金効率が悪すぎるから」の1点の理由によります。
オプション売りは安定して毎週の高収入も可能なのですが、それでも上のAMZNの例ですと、週1%とか、最高のパターンを引いて週3%とかです。
オプション買いなら、5分で+10%とかも余裕ですからね。
せっかちな私には、高配当株はいうまでもなく、オプション売りでさえも、ちょっと性に合わないのでした。
しかしそれは各人の性格次第でしょう。
私はやっぱり、自分には物足りないのでオプション売りはやらないと思いますが、高配当株投資をされている方には、そんなものに投資するぐらいなら、オプション売りの方がいいのでは・・・?と思えてやみません。
でもそれも各人の性格次第でしょうね。
あくまで、私はそう思う、というだけの話に過ぎません。
最後、AMZNプット売りに話を戻すと、2枚目の最新のオプション板画像で、もし売るならどうするか見ておきましょうか。
そうですね、私なら、最初に挙げた例と全く似たような感じで、やや安全に、しかし過度にリターンは下げず、「行使価格1490ドルのプットを、16.20ドルとかそのぐらいで売却」ですかね。
これで、来週金曜日、AMZN株が1490ドルを割っていなければ、それだけで1620ドルの現金丸儲けです。
株価完全横ばいでも結構な利益というのも、凄まじい点ですね。
逆にもし割ってしまったら、行使価格である1490ドルでAMZNを100株買わされることになりますが、繰り返しですが「AMZNを1490ドルで買う」というのは、今現在、別にそこまで悪いことでもありませんので、予想が外れてもそれだけの話なんです。
もちろん、市場全体がクラッシュしてAMZNが一気に1200ドルぐらいまで落ちちゃうと大損ですが、これも繰り返しですが、それぐらいの市場クラッシュが来た場合、高配当株だってのっぴきならない下落をマークしているでしょうから、高配当株をホールドしている方だって大損ですしね。
あ、ちなみに、残念ながら株価が下がってプットの権利を行使されてしまい、AMZN株を買わされた場合ですが、そうしたら今度は満を持してコールオプション売りに移行です。
それに関しては、もう長くなったこともありますし、また次回以降触れようと思っています。
最後に、AMZNだけではあれなので、他の強そうな企業、今回は、
・もう1人の王者GOOGL
・株価は高いけれどボラも大きく、オプション売りにうってつけそうなTSLA
・時価総額ナンバー1、本当の王者はこの人、しかし株価自体はAMZN・GOOGLより遥かに低いのでオプション売りもやりやすいAAPL
・・・の3社をピックアップしてみました。
これらの、2/16~23の動きを見て、私なりの取引例(あくまで想像上、ペーパー取引ですが)をお示ししましょう。
なお、取引例は、23日の画像(=答)は一切見ず、16日時点の画像だけ見てフェアに考えています。
まぁ、どうせアットザマネーから2-3段階低い行使価格のを売るだけなんですけどね。
【GOOGL】
2月16日引け時点のGOOGLオプション板 |
1週間後、どうなるかな?
2月23日引け時点のGOOGLオプション板 |
1週間で920ドルゲットだぜ!(週利+0.85%)
【TSLA】
2月16日引け時点のTSLAオプション板 |
2月23日引け時点のTSLAオプション板 |
1週間で360ドルゲットだぜ!(週利+1.10%)
※なお、GOOGLプットを売るぐらいの余力資金があるなら、TSLAプットなら3枚売ることができますので、週1080ドルゲットできていたことになりますね。何枚売るかは余力と自信次第!
・・・しかしTSLAはボラが高い印象でしたが、AMZNと大体同程度なんですね。まぁ、AMZNも最近上がりすぎだから、ボラが高くなっているのかもしれません。
【AAPL】
2月16日引け時点のAAPLオプション板 |
2月23日引け時点のAAPLオプション板 |
1週間で57ドルゲットだぜ!(週利+0.34%)
※AAPLプット売りに必要な最小の元手は1万6000ドルちょいですが、リターンも、わずか57ドルぽっちです(もちろん、2枚売れば114ドル、10枚売れば570ドルですが)。
この通り、株価が小さくなると、1段階アウトオブザマネーになるごとにプットの価格は激減してしまうパターンが多く、やや危険を冒しても利は小さくなることが多いです。
(しかしそれでも、週利0.34%=年利17%とかですから、高配当銘柄が勝負できるような利率ではありません)
売る枚数を重ねても無駄に手数料が増えてしまうわけですし、 個人的には、プット売りをするならやっぱり大型株(株価が大きい、という意味で)かな、という印象があります。もちろん、必要になる資金は甚大になりますけどね!!
たださらに言えば、もっとボラの激しい低位株であれば、株価が小さくとも大きな利益を上げることが可能です。
でも、ボラの激しい低位株なんて、超大暴落する危険性がメチャクチャ高いことと同義ですから(下手すると倒産する)、それは非常に危険な取引でしょう。
まさにハイリスクハイリターン、私なら、そんなのでリスクを負うなら、オプション買い取引にするかな、って気がします。
・・・なんだ、この週は全部好調に値を上げていましたので、全勝でしたね。
もし株価が行使価格を割れていたら、「○○株を行使価格で100株買わされた。今週以降の株価回復に期待するとともに、今度は行使価格○ドルのコールを×ドルで売って今週の利益ゲットを狙います!」って書くつもりだったんですが、当てが外れてしまいました。
とりあえず今回の結論としては、こんな感じですね。
アウトオブザマネーのプットを売れば、毎週1%の収入を得ることも可能!!
自分がやるとは言っていませんが、少なくとも高配当株ホールドよりは、大変オススメに思います。
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