2018年2月5日月曜日

米国株OP取引の実践的解説5:オプション板の見方・実践編


(前→その4:オプション板の見方・基本編 / 次→その6:買いと売り

実践的な実戦でのオプション板の見方なんかを解説しようと思ったのですが、色々何から説明しようか考えている内に、1つの結論じみたもの、「あんまり意味がないかな」というものに達しました。

そう思う理由としましては、実践的な取引のやり方・方針・考え方なんて人それぞれだから、私があえて1つの考え方を提示して解説するなどおこがましい、という点もありますが、それ以上に非常に強く感じたのが次の点です。


ズバリ、各項目の定義というかそれぞれの意味さえ説明したら(=前回の内容)、後は、自分の目と頭でどうなるか考えてもらう以上に実践的なものはないのではないか、これ以上の説明はひょっとすると蛇足に過ぎないのではないか、と感じたわけです。

よりぶっちゃけて言うと、定義やルールといった基本事項の説明を受けた後、さらに具体的な解説を逐一もらわないと、どうなるかが、どうすればいいかが全く分からないような人は、はっきり言ってセンスがなく、恐らくそういう方は数字に弱いタイプかと思うので、オプション取引には向いていないのではないか・・・と、ふと思った次第です。


オプション取引はやはり株取引よりは遥かにハイリスクな取引なため、万人に向いている取引ではありません。


偉そうに「数字に弱い」だとか言いましたが、得てしてこういう数字に強いと思っている輩よりも、数字は苦手だけど、だからこそ数字遊びをせず実直に堅実に積み立てていくようなタイプの人の方が、投資では良いパフォーマンスを残したりするものです。


人には向き不向きがありますから、例えばもしこれまでの私の記事を読んでいて何をやっているのか一向に全く理解できなかったり、3つや4つ、あるいはそれ以上の数字の変動を同時に判断することに強いストレスを感じるあるいは眩暈や動悸に襲われるというような方は、リスクを冒してまでオプション取引をやる必要はないように思います。


ETF他、優れた金融商品は他にいくらでも存在しますので、自分に一番合った商品というのが、探せばきっと見つかることでしょう。


私はオプション取引が自分に一番合っていると思うのでひたすら推奨や解説を続けていますが、決して万人に一番合っている取引ではないことは、前述の通りです。


酷い上から目線で恐縮ですが、全く同じことを繰り返しますが人には向き不向きがありますので、不得手なものに手を出すのは愚の骨頂です。

数字には強くなくても、例えば流行や時代の流れに人よりも敏感な方は、トレンドを読んだ中長期投資や、流行品のせどり取引なんかに向いているかもしれません。

逆に私はそれらに弱いので、より数字いじりの側面が強い短期的なオプション買い取引にちょこちょこ手を出している次第です。


何事も適材適所ですね。


必ずしも数字が苦手な方はオプション取引を絶対にできないわけではないと思いますが、やはり、どちらかといえば数字が好きな人の方が向いているかな、という気はします。

高度な数学的知識とかは、私もありませんし全く必要ないんですけどね。

やはり、オプション板には大量の数字が踊っていますので、オプション取引が自分に合った取引対象になるかという点では、何の解説を受けなくても、各数字の意味や動きを直感的に読み取れる人の方が強いように思います。



・・・しかしこれだけではあまりに無責任ですから、一応、解説といいますか、私が実際オプション買い取引に入る際、何をどのように見ているか、その例示だけしてみようかと思います。


もちろんこれはあくまで一例であって、私の考え方が全てではありません。

むしろ「何だこの考え方は」という感想を持たれて、ご自身の直感やセンスで、どう動くべきなのかより良い考えが出てくるような方は、オプション取引に非常に向いているのではと思います。



前置きがとてつもなく長くなりました。

さてその実例ですが、昨日示したGEのオプション板を使おうと思ったのですが、あれは金曜日のもので満期当日にあたり若干扱いづらかったので、先週月曜日時点に画像を撮っておいたGEのオプション板を使おうかと思います。


こちらが現地時間2018年1月29日引け時点のGEオプション板です。



この日GEの株価は、前日比+0.93%アップ、16.28ドルで取引を終えていたようです。

取引が終わっているのでもうエントリーはできないのですが、これが営業時間中だったと仮定しまして、この時点でエントリーするならば私ならどう考えるか、つらつらと述べてみようかと思います。


まず目につくことは、株価が上がっているので、前の日に比べて、コールは大きく値上がり、プットは大きく値下がりしている、という点がありますね。


2月2日限(残り4日)・行使価格16.5ドルコールなんかは、前日比+57.89%の大アップです。

このように、満期がごく近くなると、アットザマネー(=現在の株価と同じ行使価格)付近、つまりインザマネー(=コールなら、現在株価より安い行使価格。その安い価格で対象株を買う権利なので、実際に価値を持っているため「インザマネー」)とアウトオブザマネー(その逆で、コールなら、現在株価より高い行使価格。その価格で買う権利は、当然その時点では無価値です!ただし将来は分かりませんね。将来インザマネーに入る可能性があるので、今は何の価値も持たないこのオプションも、値段が付いて取引きされているわけです)の境目のものが最も大きく価格変動します。


上でも下でも、あまりに遠い行使価格では、価格の変動率は小さくなります


ディープインザマネー(=大きくインザマネー)であれば、既にコールの値段そのものが高くなっているので相対的に価格変化が小さくなるため・・・

そしてディープアウトオブザマネー(※)であれば、さすがに満期までにその価格に到達できる可能性が小さすぎるので、思うようにコールの価格が値上がりしてくれないためですね。

(※追記注:こないだオプションに関する情報を見ていて気付いたのですが、大きくアウトオブザマネーのオプションは、「ディープアウト」ではなく「ファーアウト(またはファーザーアウト)」と呼ぶようですね。 確かに、アウトがディープというのも変な話です。

 我流ゆえ変な用語を使ってしまいがちで、この記事に限らず他の記事でも「ディープアウト」とよく書いていた気がしますが、意味は通じるのではないかという気がするので、特に訂正もせずそのままにしておきます。一般的にはファーアウト、FOTMと略されるもののことですね。混乱された方がいらっしゃったらどうも申し訳ありません)


ただし、満期がかなり遠ければ、ディープアウトオブザマネーのコールであっても価格が動くこともあり、ひとたび動いてくれれば、絶対的な価格が非常に小さいこともあり、変化率はとても大きくなります。

(2月第3金曜の行使価格17.5ドルコールなんかは、前の日に0.07ドルだった評価額が、この日0.10ドルになったので+0.03ドル、わずか3セントアップですが、たった+3セントで+42.86%のアップなわけですね)


長々と分かりにくい説明をしましたが(文章にすると、より分かりにくいです)、改めて最初に述べた点を繰り返すと、以上のことを直感的に、一瞬で理解できないような場合、その方はオプション取引にはあまり向いていないかもしれない、と言えるように思います。

(もちろん慣れもあると思うので一瞬で理解できなかったらオプションは無理です、はいさようなら、とはなりませんが・・)



それはともかく、実際にこの日にエントリーするならば、どうでしょう、私なら、こんな風に考えると思います・・・


オプション買い取引エントリーの考え方の一例


 1. コールかプットか選ぶ

まずはコールかプットか選ぶわけですね。

以前から書いていますが、この先株価が上がると思うならコールを、下がると思うならプットを買う、という、非常に単純な選択です。


私は、実際既に保有していることからも明らかですが、この時点でGEのオプションにエントリーするならば、プットの買いに走ると思います。

プットはこの日軒並み価格が下がっていますが、逆に言えば、前日より安くなっていてお買い得になっているとも言えますからね。

GEがこの先下落に転じると踏むのであれば、またとない買いチャンスでしょう。


実際この日私の保有する、緑三角形つきの2月第3金曜・行使価格16ドルのプットは、前日比-10.64%の下落をしてしまいました。

この前の日に売っておいて、改めて買い戻すだけで、10%以上も安く買えた、または同じ資金で10%以上も枚数を増やすことができた、というお話ですね。

まぁ、そんなのは結果論でしかなく、後からなら何とでも言える与太話筆頭なんですけどね。


なお、安全を期すならば、コールかプットどちらかだけではなく、両建てをするという選択肢もあります。

実際、私はKODKオプション取引では、どちらに動くか全く分かりませんし動く時はきわめて大きく動く銘柄なので、コールとプットの両方を購入しました。

両建て買いについては、また別の機会で取り上げてみようと思います。

2. どの満期にするか選ぶ

次は、どの満期のプットにするか考えますね。


これは、同じ商品がそれぞれいくらぐらいで取引されているかを見てみます。


例えば、行使価格16ドルのプットを見比べましょうか。

2月2日満期のプットは、評価額(BidとAskの平均値です)0.13ドル、2月9日満期は0.235ドル、2月第3金曜満期は0.335ドル、そして3月第3金曜満期は0.565ドルとなっています。

同じ価格で同じGEの株を売る権利なのに、 随分と違いますね。今週満期と3月満期とでは、実に4倍以上の価格差です。


なぜそんなに値段が違うのか?


こんなのは言うまでもなく、残された時間的猶予の差ですね。


今週満期のやつは、GEの株価があと4日以内に16ドルより下がってくれなければ、「16ドルより高く売れる株を16ドルで売る権利」など何の価値もありませんから、紙くず化します。

(注:ただし、以前も書いた通り、実際はそこまで下がらなくても、株価がこの先少しでも下がりさえすればプット価格はその時点で今より確実に上がっているので、 株価が実際に16ドルまで下がらなくても普通に利益は出せます。・・が、話を分かりやすくするために、ここでは満期での株価勝負を考えるとしましょう)


一方3月満期の方は、46日の猶予があります。

46日もあれば、GEが16ドルを割る可能性は十分高い気がしますね。

このゆとりの差が、プットの価格差となって現れています。


ただし、言うまでもありませんが、取得単価が4倍も異なるということは、同じ価格だけ株価が下がっても、利益率に大きな違いが生じます。

例えばGEの株価が翌日1ドル下がったとしますと、オプション価格変化率を示すデルタ値をそのまま使うとすると、2月2日満期のプットは0.13ドル→0.44ドルぐらいと一気に3倍以上の値段になりますが、3月満期のプットは0.565→0.97ドルと、2倍にもなりません(それでも70%超のアップで凄い値上がりですが)。


まさに、ハイリスクハイリターンだということですね。


どれを選ぶのがいいかは、もう完全に個人の自由でしょう。

私は、リスクとリターンのバランスを取って、この日の少し前に、2月第3金曜満期のプットを選んでいた、ということですね。


まぁ、本当にこの瞬間に新規エントリーするのならば、それより1週間前の満期であれば、この行使価格のプットは0.1ドルの差、実に30%もの価格差があるので、ちょっとリスクを冒して2月9日満期のもありかな、って気はしますね。

さすがに残り4日のやつは、予想とは逆に動いた時の損失がやばくなる上に、もはや株価の再下落を願って粘るだけの猶予もなさすぎるので、これは手を出せないかな、って気はします。

相当何か自信があるとき以外は、そこまでリスクを冒すのはやめるのが吉でしょう。

3. 行使価格を決める

とりあえず2月第3金曜のプットにしてみようかなぁ、と決めてみたとしましょう。

(もっとも、必ずしもこの順番どおりに考える必要はないので、2番と3番は目線を行ったり来たりさせて、随時色々なパターンを考えます)


先ほどは行使価格16ドルのプットに注目してその値段を見比べましたが、もちろん、それ以外の行使価格のやつらも選択対象として考えてみるべきでしょう。


このとき私は、そのオプションが「実質いくらの価値を持つか」を常に考えます。


つまり、現在この満期の行使価格16ドルプットの評価額は0.335ドルですので、プットの場合は「この行使価格で売る権利」であるため、行使価格から評価額を差し引いて、現在実質15.665ドルの価値がある、と見るわけです。

(コールの場合ならもちろん、行使価格と評価額を足して考えます。要は、以前触れた、「損益分岐点」の考え方ですね。「損益分岐点」としては使いませんが、購入時の価値判断には有用な考え方です)


全て見ていくと、上から、

行使価格15ドル→評価額0.105ドルなので、14.895ドルの価値
行使価格15.5ドル→評価額0.18ドルなので、15.32ドルの価値
行使価格16ドル→評価額0.335ドルなので、15.665ドルの価値
行使価格16.5ドル→評価額0.56ドルなので、15.94ドルの価値
行使価格17ドル→評価額0.89ドルなので、16.11ドルの価値
行使価格17.5ドル→評価額1.305ドルなので、16.245ドルの価値

となります。


高い行使価格のプットほど、今持つ価値が大きいですね。

特に行使価格17.5ドルのプットなんて、現在16.245ドルの価値を持つので、ほとんど今の株価と一緒、つまり、もし満期まで株価が思うように全然下がってくれなくても、ほとんど全くダメージがない、すなわち負けの確率が極めて低いということになります。

最悪、満期を株価16.24ドルで迎えれば、 1株あたり0.005ドルの利益を出せることになります。

これは正直、非常に勝算の高い、分のいい取引に思います。

(もちろんGEの株価が大きく上がったらこれでも大負けしますが、プットにエントリーする以上、下がってくれることを望んでいるわけで、少しでも下がれば負けがないというのは非常に心強いです)


ただし!これも満期選択の時と全く同じですね。

予想通りGEの株価が大きく下がってくれたときの利益率が、上の方にある危険なプットに比べて、天と地になります。


例えばGEの株価が一気に15ドル割れ、この時点より1.3ドル下がったとしたら、またデルタ値を用いて計算してみると、

行使価格15ドルのプットは0.105ドル→0.105+0.1455×1.3=0.294ドル3倍弱に膨れ上がり、行使価格16ドルのプットなら0.335ドル→0.335+0.3881×1.3=0.84ドルとこれも2.5倍になりますが、行使価格17.5ドルのプットですと、1.305ドル→1.305+0.8612×1.3=2.42ドルと、1.85倍程度の評価額に甘んじます。

さらにより正確にいえば、行使価格15ドルのプットは、株価の下落に伴いデルタ値自体がめちゃくちゃ上昇するので、実際は恐らく5倍以上の値段になると思います。

(目安として、株価が1.3ドル下がったら、行使価格が1.3ドルぐらい上、すなわち行使価格16.5ドルのプットの現在価格と似たような値段で取引きされているぐらいになるでしょう。そのプットの評価額を見ても(=0.56ドル)、楽に5倍を超えることが見てとれますね)


プットオプションの「株価下落時の値段の上昇率」は、アウトオブザマネーからインザマネーに近付くほどに、凄まじく大きくなるからこそのお話です。



・・・ということで、結局、世の中上手いことできているもので、全てが完璧な商品など存在せず、大きなリターンを期待できるものには大きなリスクがある、という形になっています。

どの程度のリスクを冒せるか、どの程度のリターンで満足なのか、それは完全にその人自身の性格によるもので、そこに絶対の正解などありません。


自分自身としっかり相談しましょう。


以上まとめると、要はこういうことですね。


オプション買い取引においての、リスクリターン概要図



リスクとリターンを考えて、自分に一番合った商品を選びましょう。

4. 買う

最後に当たり前ですが、注文を出して買います。

私ならやっぱりそうですね、ちょうど自分の保有中の2月第3金曜満期・行使価格16ドルのプットを、この画像の瞬間でも結局選ぶかなぁ、と思います。


このプットはBid 0.33ドルのAsk 0.34ドルと、完全に1セントの隙間しかなく買いと売りが均衡しています。

よって、買いたい場合、Askの0.34ドルに指値買い注文をぶつけましょう。


Askには1002枚の売り注文が入っていますので、 1002枚までであれば100%確定で購入できます。

実際は、恐らくアルゴリズムで動かしている機関なり個人投資家が多くいるようなので、Askにぶつける形の注文の場合、事実上何枚でも好きなだけ購入することが可能です。

Askにぶつけるということは売り方有利な注文ですから、そういう注文を食ってやろうと、後から後から湯水の如く売却希望者は湧いてくるんですね。

個人投資家が買うレベルの枚数であれば、ほぼ間違いなく、絶対に好きなだけいくらでも約定可能です。


なお注意点として、GEほどの分厚いオプション板なら大丈夫だと思いますが、それでも、 オプション買い取引の注文では、絶対に成行注文を使ってはいけないと言われています。


前述の通り、売り方有利な注文や、注文ミスを虎視眈々と狙っているハイエナは至る所にいますから、不用意に成行注文を出すと、稀にとんでもない価格で約定させられてしまうことがあるようです。

オプション取引は、その項目数の多さから非常に過疎状態の商品もあるため、大変危険なんですね。

(画像には表示させていませんが、GEのオプション行使価格は、もっと上から下まで 幅広く存在します)


どんなに絶対に約定させたい時でも、オプション買い取引では指値注文を使うことは鉄則です。


ただ基本的に、 BidとAskに開きがある場合でも、Askにぶつけなくとも平均値か少しそれより高いぐらいの注文を出せば、大抵の場合約定します。

オプション取引は株取引と同じぐらい本当に活発に行われているので、少なくともこれまでの私の経験では、買いたいのに誰も売ってくれない、売りたいのに誰も買ってくれないという経験は皆無です。

(とんでもなくインザマネーやアウトオブザマネーの商品は分かりませんが、さすがにそんなのに手を出すことはないと思います)



・・・以上、めちゃくちゃに長くなりましたが、大体オプションを買う時に巡らす考えみたいなものを、実践的な例として紹介してみました。


しつこいですが、これだけの長さの考え全てを、大体3秒ぐらいで行えなければオプショントレーダー失格です。

まぁ3秒はさすがに言い過ぎですが、考える時間のタイムロスなしに、一瞬で行えるようには、数字遊びが好きな方でしたら楽勝でなると思います。


本当に割と単純なことしか考えていないので、興味ある方はぜひ米国株オプション取引に挑戦していただきたく思ってやみません。

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