2018年3月5日月曜日

米国株OP取引の実践的解説11:カバードコール売り…無配当銘柄からでも定期収入を!


(前→その10:オプション売り取引の続き / 次→その12:今の株価よりも安く株を買う裏技

前回のさらに続きです。


例として出してみた新しい設定としまして、2月23日に、3月2日限・行使価格1505ドルのAMZNプットオプションを、1株あたり22.75ドルで、1枚(=100株分)売却した、というものを考えてみました。


改めて2月23日時点のAMZNオプション板を参考までに貼っておきます。

2月23日引け時点のAMZNオプション板

この取引にエントリーするには、口座内に (1505 - 22.75) × 100 =14万8225ドルが必要になるのですが、それだけの余力資金を持っていたとします。

なお、この余力資金は証拠金として証券会社に拘束されますが、満期を迎えるか、保有中の売りポジションを買い戻すかすれば、当然、手元に戻ってきます。

単に、売りポジションを保有中は、拘束されて使えない、という話ですね。



さてこのプットは、満期である3月2日、AMZNの株価が1500.25ドルで取引を終えていたため、インザマネーで終わってしまいました。


これも改めて、3月2日時点のAMZNオプション板を参考までに貼っておきます。

3月2日引け時点のAMZNオプション板

よって、このプットオプションの権利は自動的に行使されることになり、あなたは、AMZN株を100株、約束通り行使価格の1505ドルで、同じプットを購入していた誰かから購入しなければなりません。


現在株価1500.25ドルのAMZN株を1505ドルで買わされるので、これはちょっと損している気がするのですが、既に前回長々と触れた通り、実は最初にこのプットの売却で1株あたり22.75ドルの利益をゲットしていましたから、トータルでは損どころか、1株あたり1500.25 - 1505 +22.75 =18ドルも安くAMZN株を買えたことになるわけですね。


したがって、買わされたAMZN株100株を今すぐ1500.25ドルで売れば、1800ドルの利益ゲットになるわけです。


しかし、ここで、すぐにAMZN株を手放しちゃうことよりも、もっといいやり方がある、というのが今回の本題です。


それが、カバードコール売りです。


カバードコール売り:極めて安全に行えるコール売り!保有ポジションから、定期収入が得られる!!


以前の解説記事で、コールオプション売りは、潜在的な損失が無限大であり、極めて危険な取引であると述べていました。


コールオプションを売るというのは、相手に、「株価がいくらになろうとも、私が、行使価格でその株をお譲りすることをお約束いたします」という契約ですから、仮に行使価格100ドルでコール売りをしたその株が、満期を迎えた時に例えば株価250ドルぐらいに上がっていたら、市場から250ドル出してその株を買ってきて、コール購入者にわずか100ドルで売り渡さなければいけないのです。

もしその株がバークシャーよろしく1株30万ドルにでもなっていたら、市場から30万ドルでその株を購入し、100ドルでコール購入者に譲らなければいけない(米国株オプション取引は1枚で100株なので、最低でも100株買って受け渡さなければいけません)ということ・・・


もし株価1億ドルになったら・・・まぁそんなことはありませんが、理論上は、株価に上限はないので、そんな感じでコール売りを行った人の潜在損失は青天井無限大だということですね。


しかし、そこでカバードコール売りです。

カバードコール売りとは、「対象の現物株を、コール売りでやり取りする数以上保有しながらエントリーする取引」になります。


先ほどの例に戻りましょう。


現在あなたはAMZN株を100株保有中です(プットの権利が行使され、1505ドルで購入)。

ここで、AMZNのコールオプションを1枚(=100株分) 、例えば来週満期の行使価格1510ドルコールを売ったとしましょう。


来週金曜日、AMZNの株価が1510ドルを上回って引けを迎えた場合、売却したコールはインザマネーとなり、権利が行使されてしまいます。


その時、あなたはどうすればいいかと言いますと、既に保有するAMZN100株を、行使価格である1510ドルでコール購入者に売り渡せばそれでいいだけなんですね。


その時のAMZN株価がいくらであろうと、既にあなたはAMZN株を100株保有していますから、市場から購入してくる必要はないわけです。


つまり、現物が担保されており、この契約のやり取りで必要になるものは既に完全にカバーされている、したがってエントリー時の手持ちの現金や、満期時に追加の現金なんかも一切必要ないというのがカバードコール売りの真髄になります。


現金は1円も使わず、既に持っているポジションを証拠品として、勝率が高くそれなりの利益も得られるオプション売り取引にエントリーすることができる・・・それが、カバードコール売りです。


この、1円も使わず、今ある保有株を担保に結構な金額の現金をゲットする取引、オプション売りなので時間を味方につけられますから結構勝率も高く、割と気持ちのいい取引です。

(本当に手持ちの現金は1円も必要ないので、「株は持っているけれど現金がない」時のお小遣い稼ぎにちょうどいいって感じでしょうか)



しかし、もし予想が外れて敗北した時は実際どうなるのか・・・?

例えば何かとんでもないことが起こって、AMZN株価が来週5000ドルになっていたとしましょう(あり得ませんが、例として)。


もしAMZN株を全く持たずにコール売りにエントリーしていた場合(カバードコールに対して、「ネイキッド(裸の)コール売り」と呼ばれます)、あなたは、市場からAMZN株を5000ドルで100株買って、行使価格の1510ドルでコール購入者に譲り渡さねばいけません。

すなわち差し引き大体3500 × 100=35万ドルもの巨額な現金がないと追証借金コース、というか実はそれ以前に、まず第一に市場からAMZN株を買うということも当然あなた自身の責任でやらねばなりませんから、手元に5000 × 100=50万ドルの現金がない限り、その株式購入ステップの時点で証券会社から追証を食らうことになり、結構な金利を支払わなければならなくなるでしょう。

(もちろんその後1510ドルで売却できるので15万1000ドルは返ってきますが、一時的にでも追証(margin call)を食らうので、ペナルティがあります。

またちなみに、そもそもそれなりの資金がないと、ネイキッドのコール売りにはエントリーできないようになっていると思います。必要証拠金は証券会社によってまちまちなので、いくらあればエントリー可能かは、証券会社にお尋ねくださいとしかいえない話・・・というか、ネイキッドのコール売りは絶対やめましょう、カバードコール売りにしましょうと強く推奨したい限りです)


ところが一方、AMZN株を100株保有して臨んだカバードコール売りであれば、今手持ちの株をそのまま1510ドルでコール購入者に売り渡せばそれでOKです。

必要になる現金は一切ありません。

絶対に、追証を食らったり借金を負う羽目にはならないことが決まっているわけですね。

これはとても重要な点だと思います。


なおもちろん、本当なら1株5000ドルで売れたAMZN株を、たったの1株1510ドルで100株売らなきゃいけないということで、実質35万ドル程度の機会損失というか精神的損失はあるわけですが、それは実損ではなく、単に利益を掴み損ねただけであって、既に持っていた手持ちの資産・現金が35万ドル減少したわけではありません。


まぁもしそうなったら悔しすぎてやる気を失うかもしれませんが、少なくとも35万ドルの支払い義務があるのとは全然違いますし、追証で無駄金を払う必要も借金を負うことも決してありません。



カバードコール売り具体例の話に戻りますと、先ほど貼った2枚目のAMZNオプション板を見ると、来週満期の行使価格1510ドルコールは・・・大体17.25ドルぐらいでなら確実に売却できそうですね。


よって、それを売って、無事AMZNが来週金曜日に株価1510ドルを超えなければ、手持ち資金の拘束など一切何もなく、1725ドルが丸々丸儲けとなります。


本当に1円も払わず、ただ平穏無事に1週間が過ぎるだけで、約18万円ゲットです。


もし仮に予想が外れて失敗しても、手持ちのAMZN株100株を、1510ドルで売却することになるだけです。


思い出してください、このAMZN株は、1505ドル(というか、事実上、プット売却時の獲得資金を考慮して、1500.25 - 18=1482.25ドルで購入したものでした。


どれだけ予想が大外れしようとも、既に、購入額より高値でAMZNを売却できることが確定しているんですね。


もしAMZN株がこのまま横ばいで伸びずにいてくれたら、本当に、一切何も差し出すことも失うこともなく、ほぼノーリスクでただ1725ドルが湧いて出てきた、という凄まじい結果になります(言うなれば、あなたは「時間」というリスクを売ったということ)。


もちろん、AMZN株が上で挙げた5000ドルまではいかなくとも、例えば1600ドルとかに大きく上がってしまったら、「1600ドルで売れたものを1510ドルで売らなきゃいけないのか~!!」という悔しさはありますが、何度も言っている通り、実際に資金的に損失を食らうわけではありません。

その場合は、「1482.25ドルで買ったものを1510ドルで売れたんだ、買値より高く売れたんだし十分十分」と思うようにすれば良いでしょう。


さて、もしAMZNの株価が伸びて、売却したコールの権利が行使されてしまい、AMZN株を1510ドルで売却することになったら、現金が戻ってくることになりますから、気を取り直して、その資金で今度はまた最初にやったプット売りにエントリーすればいいということですね。


以下この繰り返しで、配当より遥かに高額な利益を、遥かに早いサイクルで、永久的に回して獲得していくことが可能です。


このサイクルが破綻するのは、「対象の株価が大暴落して、回している資金が目減りしてしまう」時のみですから、AMZNのような強い銘柄で回していけば、ちょうど例に挙げたように、最小のオプション1枚回しですら、毎週18万円の収入が得られることになりますね。

(もちろん、エントリーには、15万ドル程度の余力資金が必要です)



なお、別にプット売りからのエントリーでなくとも、手持ちの株で100株以上保有しているものがあれば、カバードコール売りが可能です。


既に何度も書いている通り、カバードコール売りでは、エントリー時に必要な資金は1円もありませんし、予想が外れても、単に「行使価格でその株を売る」ことになるだけです。

「この価格なら売ってもいいかな」という行使価格でコール売りを行えば、全く何も失うこともダメージもなく、ただひたすら保有銘柄から定期収入を引っ張り出すことが可能なのです。


100株以上持っている銘柄があり、ただ放置している方、非常にもったいないですよ!!


カバードコール売りを行えば、その銘柄から、いわば毎週「自分配当」がもらえるようなものです。


ただしもちろん、株価大暴騰を期待している成長株であれば、カバードコール売りをしてしまったばっかりに爆上げを掴み損ねた、ということになる可能性が高いので、あまりオススメはできかねます。

(上の、AMZNが5000ドルになっちゃった、という例ですね。カバードコール売り唯一の資金損得上での弱点は、株価が爆上げした時に、その利益を掴み損ねる、という本当にただその1点のみです)


しかしそういった爆上げ期待の成長株を持っているわけでもなく、安定値動きで配当を得られればいいな、などと思っているようなポジションであれば、個人的には、ずっと保有しているポジションをただ眠らせておくのは本当にあまりにもったいなく、カバードコール売りをすればいいんじゃないかな、と思えてやみません。


無配当銘柄からでも定期収入を引き出せるし、高配当安定銘柄からでも、配当以外の追加収入を保有ポジションから産み出せる(むしろ、高配当安定銘柄の方が、突然の株価アップの可能性は少ない印象がありますし、向いている)このカバードコール売り、心の底から、強くオススメのやり方です。


【まとめ】

カバードコール売りのメリット

  • 超低リスク(事実上、手持ちの現金を失うことが一切ないので、リスク0)で、自分の保有ポジションから、定期的に収入を産み出せる

カバードコール売りのデメリット

  • その株を、100株以上持っている必要がある
  • その株が爆上げした時に、その株価上昇分の利益を掴み損ねてしまう 
  • (例によって)国内証券会社では取り扱いがない

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