2018年3月19日月曜日

米国株OP取引の実践的解説12:今の株価よりも安く株を買う裏技


(前→その11:カバードコール売り / 次→その13:まとめ

まぁ、別に裏技でも何でもないんですけどね。

いつもタイトルでキャッチーなことを言っておいて即否定という、我ながら何だかワンパターンな感じもしますが。


普通に考えれば普通に思い浮かぶ、戦略と呼ぶのもおこがましい、ただのオプション取引の活用例です。

単純に、オプションにはそういう使い方もある、というお話ですね。


さて、この米国株オプション取引解説シリーズでは、主にAMZN (Amazon.com) のオプション板を例に具体的な取引を見てきました。


今回もAMZNオプション板を使って説明してみましょう。


まずは本題に入る前に、前回その11で出していたカバードコール売りの例のおさらいから話を始めるとします。


こちらがその時出していた、3月2日引け時点のAMZNオプション板・・・

3月2日引け時点のAMZNオプション板

当時の記事を振り返ると、AMZN株を100株保有しているこの状況でカバードコール売りをするならこうするかな、という例として、以下のように述べていました。

来週満期の行使価格1510ドルコールは・・・大体17.25ドルぐらいでなら確実に売却できそうですね。

よって、それを売って、無事AMZNが来週金曜日に株価1510ドルを超えなければ、手持ち資金の拘束など一切何もなく、1725ドルが丸々丸儲けとなります。

本当に1円も払わず、ただ平穏無事に1週間が過ぎるだけで、約18万円ゲットです。

もし仮に予想が外れて失敗しても、手持ちのAMZN株100株を、1510ドルで売却することになるだけです。

つまり、当時AMZN株価は1500.25ドルでしたが、例として当時1週間後の3月9日満期・行使価格1510ドルコールを、1枚17.25ドルで売却(オプション1枚は100株分なので、1725ドルの現金が得られる)という取引を考えてみたわけです。


さて、それから1週間経過し、AMZNはどうなったかと言いますと・・・

3月9日引け時点のAMZNオプション板

・・・この週は、AMZNは大伸び!!

満期を株価1578.89ドルで迎えてしまい、行使価格の1510ドルはあっさり大きく超えてしまったので、売却したコールオプションの権利が購入者によって行使されてしまい、残念ながら満期を迎えたこの時点で1578.89ドルのAMZN株を100株、わずか1510ドルで売り渡さねばなりません。


しかし、コール売りで1株あたり17.25ドルの利益を受け取っていたので、実質1510+17.25=1527.25ドルで売却できたということですね。


ただしそれを加味しても当然、この時点での株価はそれより遥かに高いので、カバードコール売りなどせず保有したままの方が良かったということになるのですが、それは結果論ですね。


なおちなみに、この一連の例でのAMZN取得単価は1482.25ドルでしたから、ここで売ることになっても十分すぎる利益は得られていることになります。


いずれにせよ、コール購入者にAMZN株を100株、1株あたり1510ドルで受け渡すことになったので、15万1000ドルの現金が手元に戻ってきました


そうしたら、以前から何度も言っている通り、今度は初心に戻ってプット売りの出番ですね。


そうすることで、プット売り→コール売り→プット売り→コール売り→・・・の、オプション売り永久サイクルを回すことが可能なわけです。


このサイクルの凄い所は、毎週かなりの割合の収入を得ることが可能だという、いわば時間をお金に換え続けることのできる、現代の錬金術に等しいといえる所にあるんじゃないかと思います。



さて、現金が戻ってきたのでプット売りのターンに入るわけですが、今回は少し見方を変えてみましょう。


別にやることは同じなのでオプション売りサイクルの一環でしかないのですが、やはりこの週はAMZNが大きく上がっていたこともあり、AMZNはこの先も伸びていくとしか思えないので、AMZNの現物株を買ってみたくなった、という人の例を考えてみましょう。


そしてこれが今回の本題ですね。

プットオプションを売ることで、今の株価よりも安く株を買うことが可能


あなたは3月9日の時点で、大体16万ドル近くの現金を持っており、AMZNを100株買おうと考えているとします。

AMZNはやっぱり伸びそうですからね、株を持っておきたいという気持ちももっともです。


さて、先ほどの画像を見ると、3月9日のAMZN株価は1578.89ドルで引けを迎えていました。

ここで、AMZN株をこの時点の株価1578.89ドルで100株買うよりも、遥かにいい戦略が存在します。


それが、何を隠そう、「プットオプションを売る」という取引になります。


簡単に言えば、プットオプションを売るというのは、実は見方を変えれば「現時点での株価よりも確実に安く株を購入することが出来る」戦略とも言えるわけなのです。


具体的に見てみましょう。


先ほど貼った、3月9日引け時点のAMZNオプション板を見直してみます。

見るべきは右下の枠、1週間後・3月16日満期(第3金曜日満期のものは月1オプションの満期でもあるため、『Mar18(2018のこと)』と、 月のみの表示がされています)のプットオプションです。


1565ドルから1592.5ドルまで、12個の行使価格が表示されていますが、この内、どれを選ぼうと、プットオプションを売った時点で、「現金丸儲け」「今の株価より安くAMZN株を買うことが出来る」かのどちらかになることが確定します。


なぜか?


・・え、説明要ります・・・?


正直、あまりにも当たり前すぎて、分かっている人には冗長すぎて意味のない説明、そして分からない人は、多分長ったらしい文章で説明を受けても結局分からないのではないか・・・というか、(以前も似たようなこと言いましたが)この程度のことが説明を受けないと分からない人は、あまり取引に向いていないのではないか、という気がするのですが、まぁそれはちょっと極論というか上から目線が過ぎるかもしれませんね。


そもそもオプション取引をよく知らない方への解説なので、いきなり「自分で考えてよ」ってのも無責任な態度です。


ということで順に説明すると、プットを売った時の売り手の運命は、「売ったプットが紙くず化して現金丸儲け」か、「インザマネーで満期を迎え、行使価格でその株を100株 × 枚数分買わされる」かのどちらかになるわけです。

そして後者の場合、「実質いくらでその株を買わされることになるのか」は、当然、行使価格からプット価格(=プットを売って得たお金)を引いたものになるわけですね。


そして、その「行使価格-プット価格」は、100%絶対に、現在の株価よりも安くなっています。


これは絶対です。


なぜならば、プットオプションには、満期までの時間価値分の付加価値が付いているからです。


言い換えると、行使価格と現在株価の差に、「時間価値」というものを加えたものがプットの価格ですから、残り時間が0でない以上、「行使価格-プット価格」は、「プット価格=行使価格-現在株価+時間価値」なので、これを代入し、「現在株価-時間価値」になりますから、これは必ず現在株価より小さくなるわけです。


よって、 先ほどの「運命」は、「現金丸儲け」か、「現在の株価よりも安い価格でその株を買うことになるか」の2択に落ち着くということですね。


具体例を見ておくとしましょう。

先ほどのオプション板から、3月16日満期のプットオプションの行使価格と、評価額(=BidとAskの平均値。この価格で確実に売れるとは限りませんが、恐らく、その価格かそれより少しAsk寄りに近い価格なら確実に売れるので、まぁここでは評価額(分かりやすく、小数点第2位を繰り上げにしましょうか)で売れるとします)の一覧、そして行使価格から評価額を引いた、いわば実質価値的なものを書き下してみましょう。

行使価格 評価額 実質価値
1565ドル 10.2ドル 1554.8ドル
1567.5ドル 11.1ドル 1556.4ドル
1570ドル 12ドル 1558ドル
1572.5ドル 12.9ドル 1559.6ドル
1575ドル 14ドル 1561ドル
1577.5ドル 15.1ドル 1562.4ドル
1580ドル 16.3ドル 1563.7ドル
1582.5ドル 17.5ドル 1565ドル
1585ドル 18.8ドル 1566.2ドル
1587.5ドル 20.3ドル 1567.2ドル
1590ドル 22.2ドル 1567.8ドル
1592.5ドル 23.3ドル 1569.2ドル

まぁ当たり前なんですが、美しいまでに、行使価格が高くなるほど(表では下)、実質価値は高くなっています。

仮に権利が行使されることになった場合、「実質的にもより高い値段で買わされる」ことになるわけですが、いざ権利行使されなかった時に得られる「丸儲けの現金」の額(=売却価格である評価額)は、低い行使価格のプットよりも、確実に大きくなります。


なお、何度も似たようなことを言っていますが、話にするとめちゃくちゃ長くてややこしいものの、考えていることは極めて単純、こういった数字の話は、頭の中で一瞬で把握できるような人の方が、やっぱりオプション取引(に限らず金融商品取引全般)には向いているような気がします。

(一瞬で把握できない人が絶対に向いていないとは言い切れないとは思いますが・・・)


話を戻しましょう。

まぁ今回は、特に現金丸儲けしたいわけではなく、「AMZN株を買いたい」という動機が第一なので、「恐らく来週権利行使されて、AMZN株を買うことになるだろう。ただし、もしもAMZN株価が伸びて権利が行使されなかったら、かなり丸儲けできる」という所、そうですね、行使価格1590ドルのプットを、22.2ドルで売却したとしましょうか。


この時点で、このプットを1枚売ったあなたは・・・

  • 満期日、AMZN株価が1590ドルを超えていた→2220ドル丸儲け
  • 満期日、AMZN株価が1590ドル以下だった→AMZN株を、実質1567.8ドルで100株購入
のどちらかの結果が得られることが確定しました。


どうです?

2220ドルの丸儲け、または、この時点での株価・1578.89ドルより遥かに安い価格でAMZN株を買えることが決定したのです。


素晴らしすぎますね。


では、早速答え合わせをしておきましょうか。


こちら、3月16日のAMZNオプション板です。

3月16日引け時点のAMZNオプション板

オーノー!・・・かどうかは分かりませんが、この週AMZNは途中から下落をはじめ、結局株価は先週の終値よりも下がった、1571.68ドルで満期を迎えました

つまり、あのプットを売っていたあなたは、行使価格である1590ドルでAMZN株を100株買わされるものの、プット売却で1株あたり22.20ドルの利益を出していたので、実質1567.8ドルで買うことになり、一応トータルでは利益となっている形ですね。


なお、先週の株価で現物株を100株直接買っていたら、既に含み損に突入していました。


もちろん、もしAMZN株価がもっと下がっていたら、プット売りで株を買っていた場合でも含み損に突入しているわけですが、言うまでもありませんがその買値は先週現物株を直接買った場合より低いので、含み損の額は現物買いより遥かに小さくなっているわけですね。


さらに別の例を考えてみると、3月9日時点で、例えば安全を期して行使価格1570ドルプットを売っていたらどうなっていたでしょうか。

このプットは、1枚12ドルで売却可能でした。

そして、AMZN株価は、その行使価格以上で満期を迎えました。


すなわち、プット売却で得られた1200ドルがまるっと丸儲けになったわけで、希望するAMZN100株は買えていませんが、先週AMZN株を買っていたら既に含み損だったところを、含み損を回避したばかりか、現金12万円ぐらいをゲットできたということで、これは夢のような状況ですね。


この現金丸儲けが確定した後、もしやっぱりAMZN株を保有しておきたいと思うなら、またプット売りに挑戦すればいいでしょう。

どうしても買っておきたいなら、今度はかなり高い行使価格のプットを売れば、権利が行使される確率が高まりますね。

もし翌週、高い行使価格のプットを売ったのになおも権利が行使されなかったら、またAMZN株を買いそびれることになりますが、その時はかなり高いプット売却のプレミアムが丸々丸儲けということですから、むしろ大勝利です。



ただし、プット売りが100%絶対に現物買いよりパフォーマンスが上かというともちろんそんなわけはなく、例えばAMZN株価があまりにも高く跳ね上がって、プット売却で得た金額よりも株価の上がりが勝っていた場合、その場合は「現物を買っておけばよかったな」という話になります。


つまり、先ほどの行使価格1590ドル・プット売却価格22.2ドルの例の場合、もし3月16日に、3月9日時点よりAMZN株価が22.2ドル以上伸びていたら・・例えば9日時点より+30ドルの1608.89ドルで満期を迎えたら、現物株を買っていた人はこの1週間で1株あたり30ドル、100株で合計+3000ドルの利益を得たことになりますから、あのプットを売ったあなたは+2220ドルの現金丸儲けになるとはいえ、利益の大きさで負けてしまっています。


でも、そんなにプットのプレミアムを超えるほど株価が伸びることって、そうそうないのではないかな、という気がします。


・・AMZNならあり得ますかね?


なお、実は先ほどちらっと書いた通り、AMZNは週の頭までは超好調で伸びていたんですよね。

https://www.google.com/search?q=NASDAQ:AMZNより

範囲選択は3月1日からにしていますが、ともかく3月9日金曜日から3月12日月曜日時点までは、AMZNは右肩上がりでした。


ちょうどその3月12日、株価1600ドルを超えた時にオプション板の画像を撮っており当時の記事でも載せていましたが、参考までに、この週の毎日の引け時点のAMZNオプション板画像を撮っておいたので、1600ドル超えのものも含め、貼り付けておこうと思います。

記録のためというか、データ的なものですね。

3月12日、AMZN1600ドル超え時のオプション板

3月12日引け時点のAMZNオプション板

3月13日引け時点のAMZNオプション板

3月14日引け時点のAMZNオプション板

3月15日引け時点のAMZNオプション板

3月16日金曜日は、上で貼り付け済みですね。


まぁ何が言いたかったかというと、12日の月曜日 、株価1600ドルを越えた時点で、例として挙げた行使価格1590ドルプットは、金曜日引け直前に22.2ドルで売っていたものが、もう11.3ドル程度と、ほぼ半額にまで沈んでいます。

つまり、その時点でこれを買い戻すだけで、差し引き10.9ドル×100=1090ドルもの利益を確定できるんですね。


プット売りは基本的に「最初に得た利益を最後まで守る戦い」になると述べていましたが、このように株価がそれなりに上がって、プット価格が大きく下がったような場合は、株価のさらなる伸びを予想するのであれば、一旦売却ポジションを買い戻し、より高い行使価格のプットの売却に再度エントリーする、っていう手もありかもしれませんね。


例えばこの「1600ドル超えオプション画像」 の時点で、売却済みプットを11.3ドルで買い戻し、行使価格1607.5ドルのプットを評価額である19.3ドルで売却すれば、合計で1株あたり22.2-11.3+19.3=30.2ドルの利益となり、先ほど「株価が+30ドルで終わっていた場合」として挙げた仮想の例における、現物株を買った場合の「1週間で30ドル×100=3000ドルの利益」を見事上回っていることになります。


ただまぁ、現実の例に話を戻すと、AMZNはそこを頂点として唐突にダダ下がりし続けてしまったので、そのプットを売り直ししていた場合、満期を迎えた時点で、現実の株価1571.68ドルのAMZN株を、行使価格1607.5-19.3=実質1588.2ドルで買わなければいけないことになり、結構大きな損を抱えてしまう状況になっていたわけですけどね。


その辺はもう、どうすればベストなのかは運次第・腕次第の結果論でしょうか。



なお、プット売りからは話がずれて個人的な感想ですが、AMZNオプションの値動きはかなり魅力的で、AMZNのオプション買いもいいんじゃないかなぁと思っていましたが、例えば3月14日とか、株価は微妙に前日比プラスですがほぼ同値、その結果、時間価値のみならずあまり株価が動かなかったことでボラも消失してしまったということで、コールもプットも結構がっつり値下がりしていますね。


もし12日、株価1600ドル超えの時点で「AMZNの伸びは世界一イィィ!!」とコール買いに突撃していたら爆散霧消していたわけですしね、王者AMZNといえど、上がりに賭けて必ず儲かるってわけでもないんですね、当たり前すぎますけど。



ともかく、今回は「プット売りで、株価をその時点より確実に安く買う戦略」の紹介でした。


個人的には、現物株を単純に買うより、多くの場合で、プットを売る方が圧倒的にいいのではないかと思います。


唯一の欠点は、100株単位でその株を買う必要がある(それだけの資金を用意する必要がある)、ということですね。

ですがこれは、ちょうど日本株の単元株みたいなもので、大体100株単位で取引するのは金額的にもちょうどいい気がしますし、そこまで大きな問題ではないんじゃないかな、という気がします(もちろん、AMZNやGOOGL等、株価の極めて大きい銘柄だとちょっと悩ましいのですが)。


私個人的には、ある銘柄を100株以上買うつもりなのであれば、現物株を買うのではなく、確実にプットを売ると思います。


まぁ、そもそも現物買いもオプション売りも私はあまりやらず、最近は専らオプション買いばかりなので、これだけ言っていて自分が手を出すことはないと思いますが、少なくとも現物買いと比べるならば、絶対にプット売りです。


超爆上げを期待しているギャンブル銘柄的なものでもない限り、現物買いよりもプット売りの方が期待リターンは遥かに大きいのではないかな、という気がします。

気がするだけで、統計的に解析したわけではありませんが・・・。



・・・と、この辺りで、オプションの買いも売りも、実践で使いそうな基本的な話は大体終えたかな、と思います。


後はもう、これら基本戦略をどう組み合わせるかは、個人の好み・戦略によるという感じでしょう。


オプション取引、ぜひ有効に活かして、高度な投資戦略を楽しまれることを願っています。

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