2018年2月12日月曜日

米国株OP取引の実践的解説7:オプション売り取引を分かりやすく例えるならば


(前→その6:買いと売り / 次→その8:売り取引をより詳しく

今回は実践的な解説の前段階として、オプション売りとは何たるか、みたいなものの説明をしてみようかと思います。


前回述べたとおり、オプション取引にはまずコールプットの2種類があり、さらにその上にそれぞれを買う売るかを選択することが可能です。


買い取引でのエントリーは、これまで私自身の取引でも何度も触れてきましたし、「安く買ったものを高く売る」という極めて単純なもので、理解は難しくないと思います。


しかし今回の「売りポジションにエントリーする」ということ、これは、現物株取引しかされたことがない方にとっては全く不慣れで非常に違和感があると思われる、近寄りがたい禍々しさみたいなものを感じてしまうのではないか、という気がします。


しかしこれも前回主張しました通り、オプションを売るにあたっては、難しい話や用意しなければならない特別なもの(信用口座とか)は、特に全く何もありません。

金利だとか貸株料だとか逆日歩だとか、空売りで出てくる意味不明な物々しい用語などとは全く無縁です。


でも、特別なものを何も用意せずに誰かに何かを「売る」とは一体どういうことなのか・・・?

ボロを着ている私には、錦のような心以外に売れるようなものは何もないんだが・・・と最初は感じてしまうものです。


錦のような心を持つ昔の私は、実際そんな風に思ったものです。


そこでまず、一番簡単にオプション売りとは何なのかを掴むために、取っ掛かりやすい説明をしてみよう、と思ったのが今回の記事になります。


これは割と色々な解説サイトで同じような例え話がされていると思いますが、 オプションを売るというのは、ちょうど保険を売るのと同じだということです。


オプション売り取引=保険屋さんがやっているのと同じことができる


保険会社というのは、顧客に対し、「万一事故や災害が起きた場合、これこれの額を補償いたします」という商品を販売していますよね。

つまり、今はまだ何もない所から、すなわち言い換えればまだ不確定な将来に対して、ひょっとすると起こるかもしれない「リスク」の補償というものに価値をつけ、それを顧客に販売しているわけです。


端的に言って、オプション売りというのは、これと全く同じことにあたるものになります。


保険会社が、「事故補償」や「火災保険」という形で、今はまだ実際には全く何も起きていない所に「不確定なリスク」という価値を作り出して商品として売りつけているのと同じように、オプションの売り手は、将来の株価変動という不確定なものに対し、「時間」と「リスク」という観点から価値を付け、それを買いたいという人に対して「補償権利書」を売りつけることが可能なのです。

(権利書を相手に渡すというその意味で、オプションの売り手は英語で「writer」と呼ばれています)



つまりざっくばらんに言い換えると、オプションを売るというのは、いわば「時間」を売っているということなんですね。

(なぜ「時間」が売れるかというと、その中には株価が大きく動くかもしれないという「リスク」が存在しているからです。ちなみに、株価が大きく下がるだけでなく、大きく上がることも「リスク」の一種です。要は不確定な要素ということですね)


売った「時間」が過ぎ去っていく間、対象の株に暴落や暴騰という「事故」がなく平穏に時が経っていってくれれば、そのオプション取引で売りつけたオプション価格(プレミアムと呼ばれます)は、丸々まるっと売り手の丸儲けになるわけです。

これはちょうど、顧客に掛け捨て保険を販売し、事故や災害が何もなければ保険料がそのまま儲けとなる保険会社と全く同じ図式です。



この話をはじめて聞いたとき、私の心は躍りましたね。


何もない凡人が、唯一賢人偉人と完全に等しく同じだけの量を持っているもの、それは「時間」・・・

その「時間」というものに価値を付けて売りつけることができる・・・そんな素晴らしいことが他にあるだろうか!と思ったわけです。


実際、よっぽど無理をしなければ、オプション売り取引は本当に極めて高い確率で、まず勝てます。



しかし、これも前回最後に触れた通り、オプション売り取引は資金効率が悪いんですね(少なくともオプション買い取引と比べた場合)。


「オプション売り取引に必要なものは特別何もない」と何度も書いていますが、例えば保険会社が保険を販売することができるのは、実際に災害や事故が起きたときに顧客に対して補償を支払うだけの体力があるからですよね。


それと全く同じように、オプション売り取引に入る際は、実は、ある程度の・・と言いますか、具体的には、望まぬ方向への株価大変動が起きた場合に、オプション購入者による権利行使を受けて遂行することが可能なだけの資金を、自分の口座内に用意しておくことが必要となります。


米国株オプションは1枚100株分ですから、これは、結構な資金になります。


何も持たないどこの馬の骨とも知らない輩が、「時間?売る売る!大暴落とかが起きなきゃいいんでしょ?んなもん起きない起きない、へーきへーき!!」 というのは、さすがに認められないんですね。


結局、いざ有事になった際に補償(オプション権利保持者への支払い)をするのに十分な力を持つ人だけが、オプション売りという名の保険売りに参加することができるわけです。

世の中何事も先立つものがなくてはいけないということなのですね。



・・話を戻すと、オプション売りというのは実際高い確率で勝つことはできるのですが、いかんせん必要となる資金に比べて利益が非常に小さいわけです。

そして、高い確率で勝つといっても、 もちろん100%ではなく、実際に大暴落などの「災害」が起きた際は、ちょうど保険会社がてんてこまいになるように、オプションの売り手は、それまでこつこつ積み重ねた利益を一瞬で全て吐き出さなくてはいけなくなったりもするわけです。


そんなこんなで、当初思ってたほどいい取引でもないな、といつの頃からか思い始め、私は最近オプション売りはあまり行わず、ハイリスクなれどハイリターンな、オプション買い取引をメインで行っている次第です。



長くなりましたが、オプション売りは保険を売るのと同じ、平穏な時間が過ぎている間は高確率でずっと勝ち続けることができるけれど、いざ大きな動きが来てしまうと(ちょうど最近の急落のような・・・)、莫大な補償金をオプション購入者に支払わなくてはいけなくなることには注意すべし、ということを抑えていただければ、大体オプション売りの概要というか骨格がつかめるのではないかと思います。



では、実際オプション売り取引というのはどういった感じなのか、より実践に即した説明をしてみましょう。


・・・と思ったのですが、既にだいぶ長くなってしまいました。


続きはまた次回に回す予定です。


一応、私は最近あまり手を出していませんが、それでもやはりこのオプション売り取引は、極めて有用な素晴らしいものであることには違いありません。

その良さを伝えていけたらと思います。

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