2018年3月26日月曜日

4倍ETFの危険性~言うまでもないお話~



昨日の続きです。

ついに出た4倍ETF・VelocityShares Daily 4X Long USD vs. JPY (DJPY) 他10種、正確には4倍ETNなので、以前見た通りETNを運営するのは金融機関なわけですが、こちらVelocitySharesシリーズは色々な金融機関と提携している商品であり、今回のこの為替4倍ETNはCitigroupが発行体となっています。

http://www.velocitysharesetns.com/djpyより

シティという大規模銀行が責任者なら、このETNを運営していく上で、財務的な問題みたいなのは全く心配いらないことでしょう。


ですがまぁ、ETNの危険性は、発行体の規模・財務状況どうこうではなく、その商品そのもののボラ・値動きにあるのかもしれませんね。


最早語るまでもない、こないだ2月頭の、同じくVelocitySharesシリーズの超人気商品だった恐怖指数インバースETN・XIVが早期償還されたのは記憶に新しいわけですが、こちらの発行体はあのクレディ・スイスですからね。

もちろんクレディ・スイスに問題があったのではなく、XIVの尋常じゃない値下がりに最早商品として成立しなくなってしまった、というのが取り扱い停止の原因でした。



さて、タイトルにも挙げたその4倍ETFの危険性に行く前に、これら為替4倍ETNの基礎データを見ておくとしましょう。


上記リンクの公式ページにある通り、これら為替4倍ETNは、全て発行済み口数16万株であり、そしてこれが驚きだったんですが、画像に挙げたDJPYの3月23日の出来高はわずか100株

10種類の4倍ETNの平均出来高はどれも300とかそこらで(3月23日、出来高0の商品もちらほら・・・)、一番出来高の大きいUJPYで、1511・・・。


圧倒的不人気商品と言わざるを得ないのかもしれませんね。
 

ぶっちゃけ、こんなん買うなら大人しくFX取引やるわ、としか思えない感じでしょうか。


一応、為替値動きに倍率をかけて取引したい場合、レバレッジをかけてFXをやるよりは、このETNの方が安全ではないかなという気が個人的にはしますが(ETNの現物買いなら追証・借金は絶対にあり得ないので)、それでも4倍ETNという商品の性質上、こちらにも確実にリスクは存在するわけで、わざわざ手を伸ばすような商品ではないのかもしれません。


上記画像を貼った公式ページにもリンクがある、この為替4倍ETNシリーズの目論見書に、きっちり具体的なシミュレーション例とともに分かりやすくリスクが記述されていたので、丸っと引用紹介させていただくとしましょう。



ところでETFを購入する時、目論見書をきちんと読み通す人ってどのぐらいいるんでしょうね。

多分、1万人に1人もいないんじゃないかと思いますが、絶対見るべきですよね。


もちろん私はその9999人の方ですが、まぁ私はETFを長期保有するわけではなく、ごく短期のトレンド勝負をしていますので、目論見書とかファンダメンタルズとかはどうでもいいからセーフということで。


でも、長期投資でETFを保有される方は、やっぱり、いい悪いの話ではなく、せっかく用意されている貴重な資料なんだから、1文字も漏らさずに読んでおいた方が自分の利益につながるんじゃない?他の誰のためでもなく、自分自身のために、読んどかなきゃもったいなくない?・・・って気がします。


「いや、そういう面倒くさいあれやこれやを避けるためにETFに投資してるんだから、そんな具体的に何につながるかも分からんめんどいことやってられっかっての」という意見も分かりますが、多分そういう所だと思うんですよね、投資家としての違いを分ける所って。

一次ソースを読み込む人が必ず勝つとは限りませんが、そういう一次ソース的な基本情報を適当にないがしろにする人は、恐らくパフォーマンスも運良く最高で市場平均程度の、基本適当なものになるのではないかと思います。


市場で勝つ上での十分条件ではなく、必要条件っていう感じでしょうかね、一次情報(=誰かの意見ではなく、客観的な元データ等)を精査するというのは。


・・・と、意味不明などうでもいい話に脱線しましたが、4倍ETNに戻りましょう。


レバレッジ型ETF/ETNのリスク

1.(当たり前だけど)通常の4倍下がるので下がる時はメチャクチャ下がる、変化なしでも微減

まずは目論見書の表1に、スポットレート(この場合、対象の為替の値ですね)が1日で+/- 1% ~ +/- 25%変化した時の4倍ETNの変化率がまとめられています。

表1:目論見書14ページより(項目タイトルを日本語に)

「調節後の数値」などが示されていますが、この「調節」とは2通貨間の利率差や、Bid-Askスプレッドが考慮されてなされるものとのことです。

まぁ、微々たる値ですから今の所は気にする必要がないでしょう。


なお、さらに表2の方で、経費率(ところで、このETNの経費率は年1.50%とのことで、まぁ結構高いですね)を考慮させた上で、1日目に25ドルだったETNが各例で2日目いくらになるかがまとめられています。

表2:目論見書15ページより(一部項目タイトルを日本語に)

まぁ、当たり前なんですけど、基準となる為替の値が+25%程度上がった時(例の1番)、この4倍ETNは、約4倍の+99.8378%アップ、25ドルだったものが49.9594ドルにまで超アップします。


逆に、為替が-24.96575%より大きく下がってしまった場合(例の11番)、この4倍ETNは-100%下がり、消滅します。


もちろんそこまで下がらなくても、軽く目論見書を見た限り、ETNの価格が-75%を超えて下がる日があったら、早期償還でいわゆるETN強制終了、暴落時の価格が返金されてハイさようなら、というパターンになってしまうようです。

・・・4倍で75%、つまり元の値が17.5%・・結構ありそうですが、まぁ為替なら多分ないですかね。


また、上記表で他に大事なのは、調節やら経費率やらで、前日から為替が変化しなかった時(例の6番)でも、4倍ETNは-0.1522%、25ドルだったのが24.9619ドルになってしまうという点ですね。


完全横ばいは運営手数料分負け、これはあらゆるETFで鉄則ですが、まぁさすがに1日完全横ばいでの、このごく僅かな減衰などは大したことないでしょう。


本当にやばいのは、連日連続で上がったり下がったりの横ばいが続く、ボックス圏相場の場合ですね。


その場合のシミュレーションもちゃんと用意されています。


2. ボックス圏相場での減衰がかなり大きい

こちらは、対象の為替相場が基準値から+/- 1%の値の移動を繰り返した時のETNの値動きの推移を例示している表です。

例1:目論見書19ページより(項目タイトルを日本語に)

10日間、スタート時の為替値から+1%を頂点→戻る→-1%を底として、行ったり来たりを繰り返した場合、為替相場はその範囲内で不変なのに、ETNの方は徐々に価値が落ちてきて、10日目ともなると、為替値はスタート時と全く同じ値に戻っているのに、ETNの価格はスタート時から-0.6%も下落してしまっています。


また、同じ為替値&アップ率を記録している日なのに、1日目と9日目では、スタート時のETN株価を基準とすると、上昇率が鈍っています(まぁこれは、ETNの価格そのものが下がっているので当たり前ですが)。


つまり、行ったり来たりで横ばいが続くボックス圏相場は、4倍ETNでは大敵だということですね。



さらに、例1の移動範囲が、1%から5%ともなると、減衰はさらに顕著になります。

例2:目論見書19ページより(項目タイトルを日本語に)

10日目、為替はスタート時に戻ってきたというのに、ETNの方は、何といつの間にやら-14.29%、仮にこの4倍ETNが最初100ドルだったとしたら、10日間で、対象の為替は全く変わらなかった状況であるにもかかわらず、ETN株価は85.7ドルにまで落ち込んでしまいました。


さらに!!

・・まだヤバイ例を示すというのか、自分の商品をどこまで傷つけるというんだぁ~!・・・という気もしますが、逐一丁寧に潜在リスクを述べなくてはいけない(と、多分SECに指導されている)ほど、それだけリスクを意識しない人が世の中には多いということでしょう。

次の例3では、為替がスタート時と同値には戻らずに、天井と底を一気に行ったり来たりするさらに鋭い振動を繰り返した場合にどうなるかを見ています。

例3:目論見書21ページより(項目タイトルを日本語に)

10日目、なんと為替の方は初日から+5%も上がっている状況だというのに、4倍ETNさん、なななんと-31.92%も減ってしまっているぅーーー!

これはいけませーん!!


・・と、まぁこんなのは正直語りつくされた話ですね。


レバレッジETFでは、ボックス圏での横ばい相場が続くことは、結構命取りだということです。



・・・って、為替って結構ボックス圏で行ったり来たりしませんっけ?


まぁ、正直、素人目で考えて、この商品はやばそうですね。

シティは、何を思ってこんなETNを用意したのでしょうか・・・?

案の定、毎日極小出来高のみで、ほとんど見向きもされていませんね。


ぶっちゃけ、こんなの下がり続けるに決まっているので、このETNのプットを買って思いっきりショートしたい限りですが、こんな過疎商品では、まず間違いなくオプションが取り扱われ始めることはないでしょう。

よって、私は未来永劫このETNを触ることはなさそうです。



割と面白そうに思った4倍ETFですが、今回取り上げたこの為替4倍ETNは、正直イマイチかなという感じでした。


もっと、例えばFANG+の4倍とか出てくれば、そういう一気に成長しそうなものであれば大型レバレッジ効果は強そうなので、面白そうなんですけどね。

さすがに為替が対象では・・・。

別の4倍ETFが出てきてくれることを期待しましょう。


それに関して、また次の市場休業日にでも、もう少しだけ4倍ETFについて見てみようかなと思っています。


あ、そういえば、FNGU/FNGDのオプション取扱いリクエストはCBOEに長文メールで送ったんですが、「受け取りました。精査中です」的なメッセージ(以前の質問でも同じメッセージが来たので、多分テンプレ返信)が来ただけで、どうなるかはもう見守るしかない感じですね。

FNGU/FNGDはやっぱりちょっと勢いを落としつつある今でも魅力的な3倍ETFなので、早くオプションが扱われ始めて欲しい限りです。

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