2018年1月29日月曜日

米国株OP取引の実践的解説3:権利とか、損益分岐点とかはどうでもいい


(前→その2:取扱い証券会社について / 次→その4:オプション板の見方・基本編

まぁどうでもよくはないんですが、少なくともオプション買い取引を実践する上では、実はどうでもよかったりします。


解説記事その1で、

『コールは対象株を行使価格で買う権利、プットは売る権利をやり取りするものであり、[行使価格+支払ったプレミアム]にあたる満期時の株価が損益分岐点にあたる』

・・とよく説明されるが、これはオプション取引のほんの一面のみを述べた話であり、全く本質を捉えていない・・


・・・的なことを書いたわけですが、そもそも本質うんぬん以前に、こういう説明って初めて見た場合はとにかく分かり辛いんですよね。


でもまぁ分かりにくいどうこうよりもやっぱり、肝心な点を見落としているというのが何より気になる所です。


どこが本質を捉えていないかといいますと、多くのオプション買い取引に関する損益の解説では、満期時点、最終的な1時点しか見ていないことがほとんどである、という点が片手落ちに感じるポイントになります。


解説その1でも貼ったグラフを再掲し、よく見かけるコール買いの損益に関する、詳しい解説の例を挙げてみましょう。



オプション買い取引に関する損益解説の例


【例】2018年1月現在の株価が20ドルであるXYZ社の、2018年2月限・行使価格22ドルのコールオプションを、1株あたり4ドルのプレミアム(=コールオプションの価格そのもののこと)で20枚購入

→米国株オプションは1枚100株分なので、このコール買い取引は、4 × 20 × 100=8000ドルの資金投入です。


満期(=月極めオプションは、第3金曜が満期になります)を迎えた時点で、XYZ社の株価が、**ドル(以下の金額)になっていた場合・・・


21ドル(というか、22ドル未満全て):「XYZ株を22ドルで買う権利」であるこのコールオプションには最早何の価値もないので、紙くず化。投入した資金全額を失うことに。-8000ドル


24ドル:現在24ドルであるXYZ株を、コールの権利を行使することで、行使価格の22ドルで買うことができます!

しかし、実はこのコール買いに1株あたり4ドルを使っていたので、トータルでは結局損していることになります。

事実上、1株22ドル+4ドルで、現在株価24ドルの株を購入したことになるので、1株あたり2ドルの損失を2000株分ということになり、この取引での損益は-4000ドル


26ドル:上と全く同じ話です。株価26ドルの株を1株22ドルで買えるけれど、その権利購入のために既に1株あたり4ドル支払っていました。26ドル払って26ドルの株を買うという状況ですね。

結局、この取引での損益は0、つまりこの株価が、満期時の損益分岐点ってやつですね。



29ドル:現在株価29ドルの株を、1株22ドルで購入できる夢のような状況です!もちろんコール購入に4ドルを使っているので実質26ドルでの購入ですが、それを考慮しても、1株あたり3ドルの利益が出ることになりますね。
オプション20枚分の購入=2000株分の購入でしたので、この取引での損益は+6000ドル


・・・ということを表したのが上のグラフなわけですが、これを見ると、正直、コール買いで勝つのは結構厳しいな、と思えてしまうように感じます。


少なくとも私は、この類の説明を見て、「最大利益は無限大といっても、株価が結構上がってくれないと利益は出せないんだな。オプション買いは負けることが多いというし、『利益は小さいけど勝つことが極めて多い』といわれているオプション売りの方が自分には合っていそうだ」と考え、しばらくの間、「基本負ける」という印象のオプション買いを行うことはありませんでした。


でもそうじゃないんですね。


もちろん、オプション買いは負けることの方が多いというのは、統計上事実だと思います(=大半がアウトオブザマネーで満期を迎える)。


そしてオプションには満期が存在するため、最も分かりやすいその時点での損益を議論することも、何ら間違っていることではありません。


しかし、上記のよくある説明で完全に見落としている点として、オプションだって、株と同様に、リアルタイムで価格が動いているということがあります。


つまり、いつどの瞬間でも好きなオプションのポジションにエントリーできるように、ポジションを畳むのだって、いつどの瞬間でも可能なのです。

損益が確定するのは、何も満期を迎えた時だけじゃないんです。


またついでに、同じくオプションの説明で必ずされる話として、「アメリカンスタイル」(=権利の行使は、満期までの間、いかなる時点でも可能) と「ヨーロピアンスタイル」(=権利の行使は、満期を迎えた時の一時点のみ可能) がありますが、正直、それらは少なくとも米国個別株オプション取引をする上で、心の底から一切全く関係ありません
(その理由については、また下の方で述べます)


「アメ・・」という文字を読んだ瞬間に、そのページは破り捨ててください。

モニターで解説記事を見ているのでしたら、モニターをパンチして破壊し、見えないようにしましょう。


・・まあそれは冗談ですが、極めて重要な点として、米国株オプション買いでは、満期を迎えた時点での株価勝負などはほとんどなく、実際は、購入後からの値動き勝負、すなわち、満期日という離れた1点のみを見るのではなく、株価の動きという線を見ることが重要になるのです。

したがって、上記の満期日のみに着目した損益判断グラフは、やや片手落ちに感じてやまない、個人的にそう強く思える次第です。


ただしこの点、恐らく米国株オプションよりは普及しているであろう、日経225オプションとは若干違う点かもしれません。

日経225オプションは対象が指数であり、そこまでデタラメに動くことはない、かつ現物を介さない差金決済が行われるという点からも、満期日(SQ日と呼ばれるのでしょうか)での日経平均株価勝負になることが割と多いと思います(やったことがないので印象ですが)。

一方米国株オプションは、銘柄によっては対象となる株価がとんでもなく大きく動くことも非常によくあるため、満期日時点での株価がどうなっているかよりも、 購入後株価がどう動くかが極めて重要になる(勝つのも負けるのも、満期前にケリが着く)ことが圧倒的に多いように思います(これもあくまで個人的な印象ですが)。


米国株オプション買い取引は、結局株取引とほとんど同じ

権利だなんだというのがオプション取引を複雑にしている元凶な気もするのですが、米国株オプションを買って、権利を行使することは事実上ありません。

それに関する解説もいずれ別の記事で行おうと思いますが、少なくとも私はこれまでのオプション買い取引の経験で権利を行使したことはありませんし、今後も未来永劫絶対に権利を行使することはないと断言できます。


なぜか・・?


それは、購入したオプションは、満期を迎える前に、必ず売却してそのポジションを閉じるからです。

(よって、権利行使に関するアメリカンスタイルとかヨーロピアンスタイルとかいう設定は、通常、我々個人投資家にとっては全くどうでもいいわけです)


「オプションっていうのは権利のやり取りなんだよね? せっかく買った権利を、使わないでポジションを閉じるってどういうこと?権利を行使せず売り払う?どういうこっちゃ??」

・・という疑問をもたれる方もいらっしゃるかもしれませんが、そもそも購入したオプションの処分方法には2種類あるんですね。


「権利を行使する 」と、「オプション自体を売却する」の2つです。

あ、一応もう1つ、残念ながら無価値化した場合の、「紙くず化したものを満期まで放置」ももちろんありますね。まぁ、価値があるポジションを畳むには、上記2つということです。


そして、先ほども言った通り詳しい説明はいずれ別記事で取り上げようと思いますが、権利を行使するのではなく絶対にオプション自体を売却する理由というのは、簡単に言えばズバリ、「その方が自分にとって必ず得になるから」の一言に尽きます。


(※追記:久々にこの解説記事を読み直してみたんですが、よく考えたら別記事でまとめずに解説を終えてしまった気がします(どこかでしたような気もするんですが)。

簡単になぜそうなのかをここでも説明しておきますと、「権利行使すれば保有しているオプションの時間価値が完全に失われる。しかし売却すれば、まだ残っている時間価値ごと相手方に売りつけることが可能ということになります。

オプションの価格というのは[現在の株価-行使価格](プットなら正負逆)といういわゆる「本質的価値」に、「時間価値」が加えられることで決まっています。

つまり、仮に満期当日、どれだけ残り時間が少なかろうと、オプションには常に時間価値が内在されているということになるわけですね。

権利を行使すると、受け取れる利益は[現在の株価-行使価格]のみ、すなわち時間価値をむざむざと捨ててしまうことになります。

したがいまして、例外なく、常に、売却してポジションを閉じた方が自分にとって得になる(なぜなら、時間価値もひっくるめた値段を受け取ることができるから)、というお話です)


色々ぐだぐだ長くなりましたが、結局ポイントはただ一つ、オプションを買うというのは、株を買うのと同じで、ただただ「なるべく安く買って、高く売りたい」というシンプルな取引だということに尽きる、というお話です。

そこに、権利とか、損益分岐点とかややこしいことは一切絡んできません。

買った値段より高く売れたら成功、低くなってしまったら失敗、何も難しいことはなく、単純明快な分かりやすい取引です。


株取引との最大の違いは、もちろん「満期という時間制限が存在する」という点がありますが、他に大きな違いとして、オプション取引にはコールとプットの2種類があり、株価が上がれば値段が上がるコールと、株価が下がれば値段が上がるプットの、2種類から自分の好きな方を選択できるという点が挙げられましょう(これは既にその1でも述べていたわけですが)。


サラッと言いましたが、これは、オプション取引にとって非常に素晴らしいメリットです。

株を買った場合、その株価が上がることを願うしかないのですが、オプションであれば、下がると思う銘柄のプットオプションを買うことで、株価の下がりから積極的に利益を得ることが可能となるわけですね。

いわゆるショートポジションです。まぁ、正確にはプットオプションのロングポジションなので厳密には正しくないかもしれないんですが、対象銘柄のショート的ポジションということですね。


・・あ、あと、現物株取引との違いは、米国株は1株から購入できますが、オプション1枚は100株分が最小1単位、つまり、表示されているオプション価格(プレミアム)を100倍したものが実際に払う金額になる、という点もありますね。

日本株は100株が1単元だったと記憶しているので、その意味では、オプション買いは日本株の単元での取引と似ていると言えますね。


それからやっぱり、システム的な面以外での最大の違いとしては、これまで私自身が示してきた通り、オプションは、株とは値動きが比較にならないほど大きい、という点があります。


現物株では絶対にあり得ないような値動きが、オプション取引では極めて頻繁にあります。


その最たる例は先日のGEですね。

決算後2日で、実はGEの株価自体はわずか5%弱しか下落していなかったというのに、私はGEのプットオプションを買うことで、+130%の利益をゲットしました。

冷静に考えると、信じられないぐらいの違いです。・・・しかし、事実です。


ちなみに、GEの株価が上で挙げたグラフの言う「損益分岐点」などに達する前から、私のポジションは極めて大きな利益を上げていました

そしてプット売却時、満期まではまだ1週間ありました


結局、権利行使とか満期時の損益分岐点とかは本当に全く関係なく、「プットオプションを購入後、株価が下がって、プットの値段が上がったから、売却した」というそれだけなんですよね。


つまり、例のよくある解説グラフに戻ると、あのグラフや説明からは、行使価格からかなり株価が上がってくれないと(プットの場合は逆なので「下がってくれないと」ですが) 負けてしまうという印象を持つわけですが、そうじゃないんです。


オプションの価格は株価の動きに連動してリアルタイムで変わるので、言ってしまえば、「コールを買った瞬間、株価が上がったらもう勝ち」(「プットを買った瞬間、株価が下がったらもう勝ち」)なんですね。


もちろん、人には欲がありますので、ちょっと上がったからといって中々利確はできず、粘った挙句逆方向に動いて負けてしまう、ということもよくあるパターンです。

しかしもちろん、一時的に株価が期待と逆方向に動いても、改めて望む方向により大きく動いてくれれば、なお損益分岐点に届かずとも勝ちの目は十分にあります。

ただし、株価があまりにも大きく期待と逆方向に動いてしまったら、満期を待たずして事実上敗北決定ということも、いくらでもあります(もちろん、一縷の望みに賭けてポジションは持ち続けますが)。


結局、重要なのは、満期時点の株価などではなく、購入後からの株価の動きだということですね。


「オプション買いは負けることが多い」というのは否定できませんが、それは満期まで持ち越した場合であり、いい対象銘柄を選び(難しいですが)、あまり欲張らずほどほどでポジションを閉じれば(銘柄選択よりさらに難しいですが)、十分高い確率で勝つことが可能です。


事実、私がこれまでに示した4銘柄(LBOSTKGEKODK)のオプション買いは、全て利益を得ています(KODKだけは現在もポジション保有中で微妙な状況ですが、欲張らなければ、既に+50%以上を楽に取れていました)。


さて、では具体的に株価がどう動けばオプション価格がどう動くのか、そもそも権利行使価格とか満期とは一体何ものなのか、本当に全く意識しなくていいのか、という点ですが、それについても具体例で解説してみようと思ったのですが、既に記事が長くなりすぎました。

それについては次回に回したいと思います。



【今回のポイント】

米国株オプション買い取引は、値動きのすごく大きい株取引みたいなものだと考えて差し支えない。

対象銘柄の株価が上がればコールオプションの価格は大きく上がり、対象銘柄の株価が下がればプットオプションの価格は大きく上がる。
株取引と違い、上がり下がりどちらでも自分の好きな方に賭けることができるのが本当に素晴らしい点。

株と全く同じように、オプション購入後、期待通りに株価が動いてくれたら、それに連動して上手く値上がりしてくれているオプションを売却するだけ。
(ただし、期待とは逆に動いた場合の損切りは、株取引以上に重要。)


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