2018年2月18日日曜日

米国株OP取引の実践的解説8:オプション売り取引をもう少し詳しく説明


(前→その7:オプション売りを例えて / 次→その9:高配当なんて目じゃないオプション売り取引

こないだから触れているオプション売り取引について、実践的な話に入る前に、もう少し原理原則的なお話を見ておくことにしましょう。


前回、「オプションの売り取引とは、保険会社が保険を売るようなものである」と書きました。


勘のいい方なら、これでオプション売りがどんな形態の損益をもたらす取引なのか、割とすぐに察しがつくかと思いますが、オプション売り取引は、


「一度売ったが最後、そこで得た売却資金以上の利益は一切望めず、ひたすらその売り上げを守り抜くだけの戦い


という形になります。


ちょうど、保険会社が、一旦顧客と保険契約(一括払い)を成立させたら、その後はその保険契約が切れるまでその客からは一切収益を上げられず、むしろ事故や災害が起きたら保険金を支払うだけ、すなわち何も起きずに契約満期まで過ぎてくれることを祈る他ない、という形とまさに同じです。


株価が上がれば上がるほど利益が上がる株取引やオプションの買い取引とは、まさに完全に違うタイプの取引ですね。


オプション売り取引:最初に利益の全てを受け取って、あとはそれを守るだけの戦い


その意味で、損益の考え方が、オプションの買い取引と売り取引とでは全く異なります。


以前の記事で、

「オプション買い取引では、損益分岐点とか、よく解説記事で使われる満期時点における損益グラフとかは、実践上、全く無視してよいといって構わないぐらいにどうでもいい」
と書いたのですが、

(復習:米国株オプション買い取引では、満期時点の株価よりも、「購入後、リアルタイムで株価がどう動いていくか?」が重要で、満期前に決着がつくことが多いので)

オプションの売り取引では話が違います。


オプション売りは、上で書いた通り、

「まずその取引で得られることになる資金の全てを受け取って、それをいかに守り抜くか・・・満期まで1ドルも減らさずに守り抜ければ、それが最大利益となる」

という形なので、原則として、勝負は満期時の株価となります。


もちろん、「あ、これはやばいな」という株価の動きがあれば、既にゲットしていた利益をそれ以上減らさない目的で、勝負から降りる(=同じオプションを買い戻してポジションを閉じる)こともできますが、言うまでもなく、「最初にゲットした資金を守り抜く戦い」で「買い戻し」を行うのですから、得られる利益は目減りすることになります。


オプション売り取引での最高のパターンは、売りつけたオプションが紙くず化して満期を迎えること(=最初に得た利益を、1ドルも減らさずに守り抜いたことになる)、つまり、満期時の勝負に持ち込むことが一番理想なわけです。


ということで、買い取引とは違い、売り取引では、よく解説で使われる損益グラフはそのまま実践でも意味を持つ、重要なものになります。


以下がそのグラフですね。


順に、コール、プット、それぞれのオプションの売り取引の損益グラフを見てみましょう。


まずはコールから・・・


コールオプションの売り:株価が下落~横ばいで勝ち、ただし株価が上がれば上がるほどピンチに!



コールは、株価が上がれば上がるほど価格が上がりますから、それを「売却した」立場としては、株価が上がれば上がるほど利益が減っていくことになり、理論上の最大損失は、恐るべきことに「無限大」です。


例:現在の株価が15ドルのXYZ株があるとします。

3月満期・行使価格17ドルのXYZコールオプションを、1株あたり0.6ドルで、200枚売却した(米国株オプション1枚は100株に対応するので、2万株分になる)

⇒このコールの売り手は、この取引で、0.6 × 200 × 100=1万2000ドルのプレミアムを受け取ることになる。これが、この人の手にすることができる最大の利益。


3月第3金曜になり満期を迎えました。この時のXYZ株価が、***ドル(以下で示す)だった場合、この売り手は・・・


17ドル未満:おめでとうございます!今株価17ドルに満たないXYZ株を「17ドルで買う権利」など無価値ですから、このコールは見事紙くず化しました!よって、最初に受け取った1万2000ドルは、丸々あなたのものです!

結果:+1万2000ドルの利益(言うまでもなく、株価がどれだけ下がろうと、これ以上の利益は得られません)


17.2ドル:株価が行使価格を超えてしまったので、このコールを買っていた人から、「17ドルで買う権利」を行使されてしまいます。

よって、あなたは、今17.2ドルの株を市場から購入し、17ドルでコール購入者に受け渡さなければいけませんが、実はあなたはこのコールを1株あたり0.6ドルで売却していました。
つまり、実質17.2-0.6ドル=16.6ドルで1株購入できたことになるので、トータルでは勝ったことになりますね。

結果:最初に受け取った資金は減ってしまいましたが、事実上1株16.6ドルで2万株分買ったものを17ドルで明け渡すことになるので、0.4 × 20000 =+8000ドルの利益


17.6ドル:もう説明不要ですね。行使価格+受け取ったプレミアムとピッタリ同値の株価なので、実質17ドルで買ったものを17ドルで受け渡すことになり、損益0、ここが損益分岐点だということです。

結果:±0ドルの損益、ただし、オプション売りで払った手数料分(200枚なら、結構な値段になります)、マイナスですけどね。


100ドル:まさかまさか、XYZ社が突然大企業に買収されて、株価が一気に100ドルに急騰してしまいました!

上の例と同じ考えで、現在の株価から受け取ったコール売却価格を差し引き、実質99.4ドルで購入することになるXYZ株を、わずか17ドルという格安価格でコール購入者に明け渡さなければなりません!!

結果: (17- 99.4) × 20000 = -164万8000ドルの激ヤバ爆損・・・!
約1億7500万円、これは借金コースも免れません・・・。


まぁ、大げさに株価が100ドルまで上がってしまった例をあげてみましたが、もちろん株価に上限など存在しませんので、もっと上がっていることだってあるわけです(実際はないと思いますが、可能性は0ではない)。


この例ではオプションの売り手は2万株分のコールを売っていますから、具体的には株価が行使価格である17ドルを超えてから、0.1ドル上がるたびに利益が2000ドル飛んでいくということですね。

例えばこの株の株価が満期時点でバークシャー株クラスAの30万ドル(世界最大の株価)とかになっていたら(あり得ませんが)、このコール売り取引をしていた人には、6376億円の負債が発生です。

ここまでいくと笑いしか出なさそうですね。


とにかく、コール売りは、その損害が青天井無限大になっています。


これはあまりにも危険な取引ですね。


ちなみに、このコール売り取引にエントリーするには、お使いの証券会社が定めたマージンレートに則った額の資金が必要となります。

(具体的には各社異なるでしょうが、大体[行使価格-プレミアム]に、さらに20%加えた金額とかそんなものでしょうか。

今回の例なら、16.9 × 200 × 100 × 1.2=40万5600ドルが口座にないと、この取引にエントリーさせてもらえない、といった感じですかね。

適当に出した例でしたが、最大利益が1万2000ドルとかなりのものであることからも分かるとおり、これは、かなりの資金がないと入れない取引になっていました)


しかし、この「損失青天井無限大」という悩ましい性質を、完全に解決してくれる素晴らしい手段が、実は存在するのです。

それが、「カバードコール売り」と呼ばれるもの・・・

引っ張るほどの話ではありませんが、既に話が長すぎる感じなので、具体的な説明についてはまたの機会にしようと思います。

説明は別の機会に譲りますが、コール売りではこのカバードコール売りは極めて重要です。



さて、続いてプット売りについても見てみましょう。

形が線対称になっているだけ、コール売りとは株価の上がりと下がりが逆転しているだけなので似たような話ですね。

プットオプションの売り:株価が横ばい~上昇で勝ち、ただし株価が下がれば下がるほど損失は大きくなってしまう!




プットは、株価が上がれば上がるほど価格が下がりますから、それを「売却した」立場としては、株価が横ばい~上がってくれればより安全になるので嬉しい(ただし、どんなに上がっても、得られる最大利益は全く変わらない)です。

逆に株価が下がれば下がるほど利益が下がり、損益分岐点を越えると損失突入・・・

しかし理論上の最大損失は、コール売りとは違い、「紙切れを行使価格(マイナス受け取った売却代金)で買わされてしまう」という、有限なものです。


しかし、実際上そんな極端なことは起こりませんし、上昇幅より暴落幅の方が大きいのは市場の常ですから、危険度でいえば、事実上プット売りはコール売りと全く遜色ないものと言って構わないでしょう。


例:現在の株価が15ドルのXYZ株があるとします。

3月満期・行使価格12ドルのXYZプットオプションを、1株あたり0.5ドルで、200枚売却した

⇒このコールの売り手は、この取引で、0.5 × 200 × 100=1万ドルのプレミアムを受け取ることになる。これが、この人の手にすることができる最大の利益。


3月第3金曜になり満期を迎えました。この時のXYZ株価が、***ドル(以下で示す)だった場合、この売り手は・・・


12ドル超え:おめでとうございます!今株価12ドル以上のXYZ株を「12ドルで売る権利」など無価値ですから、このプットは見事紙くず化しました!よって、最初に受け取った1万ドルは、丸々あなたのものです!

結果:+1万ドルの利益(言うまでもなく、株価がどれだけ上がろうと、これ以上の利益は得られません)


11.75ドル:株価が行使価格を超えて下がってしまったので、このプットを買っていた人から、「12ドルで売る権利」を行使されてしまいます。

よって、あなたは、今11.75ドルの株を、プット購入者から12ドルで売りつけられてしまいます。しかし、実はあなたはこのプットを1株あたり0.5ドルで売却していました。
つまり、実質12-0.5ドル=11.5ドルで1株購入することになるので、トータルでは勝ったことになりますね。

結果:最初に受け取った資金は減ってしまいましたが、事実上現在の株価11.75ドルのものを1株11.5ドルで2万株分買わされることになるので、0.25 × 20000 =+5000ドルの利益


11.5ドル:もう説明不要ですね。ここが損益分岐点です。

結果:±0ドルの損益、ただしこれも、オプション売りで払った手数料分(200枚なら、結構な値段になります)、実際はマイナス。


0ドル:まさかまさか、XYZ社が突然倒産!!XYZ株は、紙くず化してしまいました。
よって、今は紙くず化したXYZ株を、12ドルも支払って、プット購入者から買い取らねばいけません!!

受け取ったプット売却資金0.5ドル分があるとはいえ、焼け石に水の大損です。

結果: (0.5- 12) × 20000 = -23万ドルの超爆損・・・!


・・ということで、この例ですと23万ドルが最大の損失になるのですが、プット売りの場合、このように最大となる支払額が決まっていますので、口座内にいくらあれば売り取引にエントリーできるかは分かりやすいです。

この例ですと、権利行使された場合に実質23万ドルがあれば問題ありませんから、23万ドルが余力資金として口座内に存在すれば、エントリー可能だということですね。


相変わらず極端な例なので大きな額に面食らうかもしれませんが、ともかく、

「権利が行使されたときに、きちんと行使価格で対象株を指定枚数購入できる資金」

を用意しておけばいいという話です。


例えば、行使価格7ドルのプットを10枚売るのであれば、 7 × 10 × 100=7000ドル必要だということですね。

(さらに、プット売却代金分、必要資金は少なくなります。1枚0.2ドルで売れたのなら、6.8 × 10 × 100=6800ドルで事足りるということですね。もちろんそこに手数料を加えることを忘れてはいけませんが)



長くなりましたが、大体オプション売り取引の原則といいますか、どういう形で損益が決まるかをざっと見てみたつもりです。


次回は実際のオプション板を見ながら、より実践的な説明をしてみようかと思っています。

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