2019年4月15日月曜日

複数の証券口座で同一の銘柄を取引した場合、税務上の取扱いはどうなる?(米国の証券会社)


日本は3月15日が確定申告の締切で、一方米国は1ヶ月遅い4月15日がTax reportのdeadlineとなっていますが、これで日米どちらも税申告シーズンは終えた感じですね。


私はとっくのとうに済ませていましたが、 レポートをまとめている時にふと、そういえばFirstradeに口座を開設して複数の証券口座を持つことになったけど、元々口座のあった証券会社で保有している銘柄と同じ株なりオプションなりを取引した場合、取得単価や取得日等の、税務上重要になるデータの取扱いはどうなるんだろうか、と気になりました。

直感的には、証券会社が違えば取引データは独立に扱われるので、両者が互いに影響を与え合うことはないのではないかと思いますが、取引している名義は私自身ですし、ひょっとするとIRS(アメリカ国税庁)の内部的には、どの証券会社で取引したかなど、分けて考えてはくれないのかもしれません。


そもそも米国市場では1年以上保有している銘柄は「長期保有」扱いとなり、売却した時にかかる税率がグッと低くなるというメリットがあります。

Firstradeは手数料無料ですし、別の証券口座でずっと保有してきた銘柄もたまに適当に取引してみたくなる瞬間があったものの、仕組みを知らないので何となくこれまで触るのを避けてきました。

せっかく1年以上保有して長期保有となった銘柄が、下手にちょろっと取引して、保有期間リセットとかされてしまってもたまらないですしね。


前置きが長くなりましたが、そんなわけで今回、この点実際どうなっているのか、証券会社に質問してみることにしました。

質問内容は、改めてまとめるほどの話でもない、上述した「別の証券会社にて保有している銘柄と同一の銘柄をこの証券会社で取引した場合、以前から保有していた銘柄の取得単価および取得日はどのような影響を受けるのか?」という話を、具体例を交えてぐだぐだ聞いてみた感じです。


Firstradeと、Firstrade以前からずっと使ってきたE*Tradeの両社に質問を投げました。


返事はまずFirstradeからもらえました。以下回答です。

もし別の証券会社から移管 (transfer) された場合、取得単価は引き継がれます。しかし、念のため、元々の取得単価をご自身で記録しておくことをおすすめします。

当社のデフォルト設定はFIFO(※First In, First Out:売却時、先に買ったものから順番に処理される方式のこと)ですが、LIFO(※Last In, First Out:その逆)にすることも、特定の購入ロットを割り当てる設定に変更することも可能です。

更なるご質問がある場合は、・・・(以下定型文省略)


ということで、相変わらずと言いますか、全然見当違いな回答が返ってきました。

移管した場合のことなんて一言も聞いてないんだよなぁ、と思えましたが、気を取り直して、「移管とかはせず、他の証券会社の口座で現在保有している銘柄と同一の銘柄をFirstradeで取引したらどうなるかを聞きたいんだけど」と再質問です。


なぜか最初の時より時間がかかりましたが、数日後、回答がもらえました。

元々の取得単価は、株式を実際に移管した時にのみ有効になります。もし移管されない場合、取得単価はFirstrade口座で取引をしたもののみが反映されることになります。

・・・ということで、やはり、異なる証券会社を介した取引は、同一銘柄であっても、それぞれの取得データに影響を及ぼさないということで間違いないようですね。


2回目の回答を待っている間、E*Tradeの方からも回答をもらえました。

お送りいただいたメッセージを精査した結果、同一の証券を2つの異なる証券会社で保有しても、損失で売却しない限り、税務処理に関して、影響を一切与えないことを確認いたしました。

損失になる売却では、Wash Saleが引き起こされ得ます。 この場合、2社でその証券を保有されていることになるため、その情報はご自身で報告していただく必要があります。

どのようにセルフレポートを行うかについて、必要になられた場合、税務アドバイザーまたは会計士にご相談いただくことを強く推奨します。IRSもまた、Wash Salesについての情報に関する出版物をオンラインで用意しています。

備忘録といたしまして、IRSはWash Saleにつながるイベントを、以下のように定義しています。

株式または証券を損失になる形で売却し、売却と同一日または売却前後30日以内に:

―実質的に同一の株式もしくは証券を購入、

―課税対象となる取引で、実質的に同一の株式もしくは証券を取得、

―実質的に同一の株式もしくは証券の購入につながる契約もしくはオプションを取得、または、

―実質的に同一の株式を、IRA(個人退職口座)もしくはRoth IRAにて取得


以上、解決のお役に立てていれば幸いです。更なるご質問・・・(以下定型文、略)


・・・ということで、E*Tradeも格安証券会社なので、それ程格式高い所でもないんですけど、うーん、やっぱりFirstradeとはカスタマーサービスの質が違う!

同じ銘柄を異なる証券会社で取引する場合、Wash Saleだけは注意せねばいけないということですね。


Wash Saleとは、簡単に言えば、「税金を繰り延べするためだけに、売って損失確定させた後すぐ買い戻すみたいなコスい真似は、一切認めねーから」というIRSが定める悪名高きルールですが、まぁWash Saleに抵触しても損失が確定されず持ち越されることになるだけで特にペナルティとかはないんですけど、あくまで通常は証券会社が自動で報告してくれるから意識しなくても良いだけで、セルフレポートをしなければいけないとなると、ルールに抵触したことを報告しなかった場合、どうなるかは分かりません。世界最強最凶のIRSに楯突くことになりますから、恐ろしい事態が待っているかもしれません。

面倒なので、2口座をまたいで同じ銘柄を取引する場合、損失になる形での売却は避けるようにする、あるいは買戻しには30日以上時間をかけて、確実にWash Saleは避けるようにするのが賢いかもしれませんね。


関連して、見当外れな意見でしたがちょうど移管についての話も出たので、そういえば株式の移管ってどうやるんだろうか、かかる費用はどんなもんだろうか、という点を両証券会社に聞いたのですが、特にブログにまとめるネタもない状況ですし、また次回、それについてまとめてみようかなと思います。

・・・まぁ正直、まとめるほどの話でもなく、各証券会社のサイトを見れば載ってる話でしかなかったんですけどね。

書いてみて、「これつまんなすぎて意味ないわ」と感じたら却下になるかもしれません。


ということで、 税シーズンの終わりに、税関連で気になる「複数口座での同一銘柄の取扱い」についての話でした。

オプション取引も現物株の保有に影響を及ぼし得ますから、別口座で現物を保有している銘柄を、手数料無料だしちょっとFirstradeでちょろっとオプション買いなり売りなりしようかなと思うこともある私にとっては、別口座なら保有状況に一切影響を与えない(Wash Saleのみ注意) という点は何よりでした。

(念のため、E*Tradeへのお礼のメッセージとともに、「一応最後の確認をしておきたいんだけど、証券会社AでのXYZ株・オプション取引は、証券会社Bの口座内のXYZ株・オプション保有状況に一切影響を与えない、という考えでいいんだよね? Wash Sale以外は、両社の取引に関して互いの影響は一切考慮する必要がない、それでOK?」と、くどい質問を繰り返したのですが、「はい。2つの証券会社の口座間において、情報は一切シェアされません。Wash Saleやデイトレ記録に関しては、ご自身で管理していただく必要があります」というファイナルアンサーをいただけたことも記しておきます)

気兼ねなく取引を楽しんでいこうと思います。

6 件のコメント:

  1. ライス様のブログ初めて拝見しました!
    すごく詳しくて、勉強になります。
    少しずつ読んでいきますね!

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    1. BBAさん

      コメントありがとうございます。

      Kさんのブログとは、名前も、キャラも、その他何もかも違う感じで、一体どういうことよこれはって感じかもしれませんが、自分でも何故こうなっているのかよく分かりません(笑)。

      一応、アドセンスの承認は当初極めて難しいものだと聞いていたので、なるべく審査でネガティブになり得るものをなくすべく(当時のソニック団は、割といかがわしいリンクや画像も散見されたため)、紐付けがされないようにこうしていたという点もありますが、承認後も、惰性でそのままこのよく分からない状況に落ち着いている感じです。


      ブログネタの方もこれといってないため最近は更新もなく、またオプション取引特化のため直接的に役に立つ情報もあまりないのではないかと思いますが、適当に目に付いた記事でも目を通していただければ、それだけで大変幸いに思います。

      毎度長く、特に頻繁に更新していた頃は誤字等も恐らく全部は拾いきれておらずそのままになってる所もある気がするので、読みにくい点もあるかもしれないんですけどね。


      ワイワイみんなで盛り上がるには、やはりより読者の多いKさんのブログが一番に思うので、またソニック団でコメントを寄せ合ってみんなで楽しみましょう。

      (もちろん、何か具体的なご質問等あればこのブログを使っていただいても全く問題なしです。一応、このブログはライス二郎の姉が運営しているというよく分からんしょうもない設定なんですが、実際ざっくばらんとした感じのライス二郎の方が私自身文章も書きやすくてやりやすいってのはあるものの、Livedoorブログのコメント欄は800字制限がありますし、そもそも他所様のブログですしね、もし何かありましたらこちらへどうぞです)

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  2. 記事と直接関係ない質問で恐縮です。

    こちらのサイトでもい勉強させていただき、知識も多少は付いたので、いざ米国株でカバードコール!と思ったのですが、
    日本国内ではデリバティブの損益は総合課税のため、納税のシミュレーションすると、デリバティブでの利益の大半を税額のアップ分でもっていかれてしまいます。

    デリバティブでの利益に関して、税額を少しでも減らす知恵やテクニックみたいなものがあったら、アドバイスをお願いできれば幸いです。

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    1. enoroxyさん

      お久しぶりです。

      私は国内での課税経験がないため詳しくは分からないのですが、軽く調べても「経費計上・法人化・家族で所得の低い人の名義を使う」等の、取引以外での小手先の技しか見つからず、一言で言うと「海外証券を使ったデリバティブ取引は税制がきつすぎる」としか言えない感じなのかもしれません。

      (参考:「総合課税 雑所得 節税」といったキーワードで検索したら出てきたテクニック→https://hedge.guide/feature/social-lending-tax-savings-6points-2notice.html)


      個人的には、「損失を翌年以降に繰り越すことができない」ということが、大きな損失を出す可能性の高いオプション買いが非常にやりづらくなるという点で最も致命的に感じます。

      ただ、カバードコール売りであれば、オプション取引自体から損失がでることはないので、その点に関してだけは心配無用かもですね。



      「高い税金を払っても、やらないよりは儲けが出る」と割り切るほかないのかもしれません。可能性は極めて低いと思いますが、税制が変わってくれることを願いたい限りですね。


      丸投げになりますが、国内から米国株オプション取引をされている方では、丿貫さん(https://hechikan.net/)が経験豊富・有能・親切と三拍子揃った超ナイスガイに感じられるため、丿貫さんに聞いてみたら何か有益な情報が得られるかもしれません。

      他にも探せばやっている方は見つかると思うので、やっぱり経験者に聞いてみるのが一番かもですね。

      個人的には、現状、目を瞑る以外に有効な手立てはないような気がしますが・・・。


      enoroxyさんにとって上手く割り切れる道が見つかることをお祈りしています。

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  3. ウコンコウ水兵 様

    毎度、ご親切に返信いただき、誠にありがとうございます。

    某サイトからは、デリバティブの利益を、株の利益に付け替えるといった技があると聞いたのですが、情報量100万円と言われて、退散しました。

    手間がかかる割に税金でもっていかれる比率が高いのが悩ましいところです。

    教えていただいた丿貫さんにも問い合わせしてみます。

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    1. 一瞬、丿貫さんが情報料100万円を請求してきたのかと思い、まさか、絶対にそんなことはあり得ないと思うけど・・・と思いましたが、どこか他所のサイトの話だったんですね。

      その裏技的情報の真偽は分かりませんが、恐らく微妙に本質的ではない、適当にはぐらかされるだけの悪質な情報ではないかと思うので(そもそもそんなのが可能だったら税制が破綻するわけですし)、退散されたのは良い選択に思います。


      結局やはり、手間と、リスクと、税金とを総合して考えて、自分にとって意味があるかどうかの選択をするという感じですね。

      丿貫さんの情報も楽しみに待ちたい限りです。

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※特に意味もないかなと感じたので、コメント承認ステップはなしにしました。
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